消費税還付法人への追徴税額が大幅増加の213億円

消費税還付申告法人に対する税務調査が大きな成果を上げている。これは、国税庁が先日公表した2019事務年度の法人税等の調査事績により明らかとなったもの。コロナの影響により調査事務量の減少等から、法人税調査件数や追徴税額が軒並み減少傾向にあるなか、消費税還付申告法人への追徴税額が唯一前年を大きく上回った。国税庁のまとめによると、2019事務年度に実施した法人消費税の実地調査は7万4千件(対前年比▲22.6%)だった。

このうち4万4千件(対前年比▲21.4%)から非違が見つかり、723億円(同▲9.6%)を追徴している。消費税還付申告法人についてみると、5838件(同▲10.9%)に実地調査を実施し、このうち707件の不正を含む3334件(同▲9.6%)から非違が見つかった。これによる追徴税額は前年比21.8%増の213億円(うち不正還付は25億円)と大幅に増加。調査1件あたりの追徴税額は同36.7%増の3641万1千円にのぼる。

事業者が国内で商品を仕入れる際には、消費税が課されるが(課税取引)、国外に商品を販売(輸出)する際には、消費税が免除(免税取引)される。事業者は売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を控除してマイナスとなった場合は、消費税の申告を行うことで仕入れに係る消費税の還付を受けることができる。主な不正の手口は、こうした仕組みを悪用して不正に消費税の還付を受けていたもの。

例えば、国外への販売を装うため、他人名義の輸出に関する書類を流用し、架空の輸出売上(免税取引)を計上するとともに、架空の国内仕入(課税取引)を計上して約2億円を不正還付していたケースがある。そのほか、輸出物品販売場で実際に店舗に来ていない外国人のパスポートを流用し、国内事業者に対する売上を外国人旅行者に販売したように装い課税売上を免税売上に計上して約1億円を不正還付していたものもあった。

消費税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い行為であるため、国税庁では今後もとくに厳正な調査を実施していくこととしている。