2017-01-18
事業承継税制(非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)が、人手不足下における納税猶予取消リスク増大への対応のため、拡充される。同税制は、後継者が納付すべき相続税・贈与税のうち、相続・贈与により取得した非上場株式等に係る課税価額の80%(贈与税は全額)に対応する額が納税猶予される。ただし、相続税・贈与税の申告期限から5年間は、一定の要件を満たして事業を継続する必要がある。
一定の要件とは、(1)雇用の8割以上を5年間平均で(2013年度改正(2015年度1月施行)前は毎年)維持、(2)後継者が代表者を継続、(3)先代経営者が代表者(同:役員)を退任、(4)対象株式を継続して保有、(5)親族外承継を対象化(同:後継者は先代経営者の親族に限定)などだ。2013年度改正で雇用確保要件の見直し等を行った結果、施行された2015年度の認定件数は改正前に比べて約3倍の水準となっている。
2017年度税制改正においては、中小企業経営者の高齢化の進行等を踏まえ、中小企業に対する税制支援を強化する。それは、(1)自然災害や主要取引先の倒産等により売上が減少した場合は、雇用確保要件を免除(一部緩和)、(2)小規模な企業を中心に雇用確保要件を緩和、(3)相続時精算課税制度との併用を認め、生前贈与を行いやすくする、(4)生前贈与後に納税猶予が取消となった場合でも、納税額が相続税と同額になる、などだ。
(1)は、セーフティーネット規定を創設し、中小企業経営承継円滑化法の認定を受けた会社が災害等を受けた場合は、その被害の態様に応じ、その認定承継会社の雇用確保要件を免除等するとともに、これらの被害を受けた会社が破産等した場合には、経営承継期間内であっても猶予税額を免除する。また、災害等の発生後に相続・遺贈により非上場株式等を取得し、円滑化法の認定を受けようとしている会社は、加えて事前役員就任要件を緩和する。
(2)は、納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に一人に満たない端数があるときは、これを切り捨てる(現行:切り上げる)こととする。ただし、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数が一人の場合には一人とし、小規模な企業を中心に雇用確保要件を緩和する。これらの改正は、2017年1月1日以後の相続税・贈与税から適用する。