2021-03-11
企業では人事異動の季節が近づいているが、法人が退職した役員に支給する退職金は、その役員の業務従事期間やその法人と同種同規模法人の退職金の支給状況などからみて相当と認められるものは損金算入が認められる。また、現実に退職はしていなくても、使用人が役員に昇格した場合などに退職金を支給するケースもあるが、役員退職給与は利益操作が行われやすいことから、税法では細部にわたって規定している。
まず、法人の使用人が役員に昇格した場合に、退職給与規程に基づき、使用人だった期間の退職金として支給したときは、その支給した事業年度の損金となる。使用人が役員に昇格したということは、会社との関係が雇用関係から委任関係となったことであり、使用人としての身分関係が終了した、すなわち退職したと考えられるからだ。ただし、未払金に計上した場合には損金算入は認められないので要注意だ。
次に、使用人兼務役員が、副社長や専務取締役などの専任役員となった場合には、たとえ使用人の職務に対する退職金として計算されているものであっても、その役員に対する役員賞与とされ損金算入できないことになる。税務上は、使用人兼務役員が専任役員になったとしても、それは単に役員としての地位の変動があったに過ぎないのだから、退職といった事実はまったく存在しないと考えられるわけだ。
ただし、その退職給与が、(1)使用人から使用人兼務役員に昇格した者であり、かつ、使用人だった期間に係る退職給与の支給をしていない、(2)給与の額が、その使用人だった期間及び使用人兼務役員だった期間を通算してその使用人としての職務に対する退職給与として計算され、かつ、退職給与として相当と認められる金額であること、の全てに該当するときは、その支給した金額は使用人としての退職給与として取り扱うものとされる。
また実務上、使用人兼務役員が専任役員となった時点で、使用人分退職給与としてまとめて支給するケースも少なくないことから、法人が新たに退職給与規程を制定・改正して退職給与を支給することとした場合に、その支給対象者がすでに使用人から役員に昇格した者であり、かつ、その使用人であった期間に係る退職給与を支給したことがないなど、一定条件を満たすものについては、退職職給与として取り扱う特例がある。