国税不服審が20年7月~9月分の裁決事例を公表

国税不服審判所は、2020年7月から9月分の裁決事例を同所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表している。今回公表された裁決事例は、6事例(国税通則法関係2件、所得税法関係1件、相続税関係1件、国税徴収法関係2件)だった。今回は、全部取消し2事例をはじめ5事例において納税者の主張の何らかが認められており、実務家にとっても参考となると思われる。

国税徴収法関係では、請求人を所有者とする不実の登記がなされている不動産を滞納法人が請求人に取得させた行為が、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第三者に利益を与える処分に該当するとしてされた納付告知処分について、その不動産が請求人所有の不動産だったかのような会計処理が行われていることをもって不動産の所有権を請求人に取得させたとは認められないと判断した事例がある。

原処分庁は、遺留分減殺請求訴訟の和解の際に、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する価額弁償金の金額について何らかの合意があったと考えるのが自然であるとして、請求人の相続税の取得財産の価額に算入する本件価額弁償金の金額は、相続税法基本通達11の2-10《代償財産の価額》(本件通達)(1)の要件を満たしており、本件通達(2)によるべきとする更正の請求は認められない旨主張した。

裁決は、訴訟中から申告までの間に直接やり取りをしていた訴訟代理人間において、本件価額弁償金をいくらとして申告するかについて協議がされていないことについては、同人らを含む関係者の答述が一致しており、訴訟中から申告に至るまでの経緯等に照らしても、本件価額弁償金については、その申告額を具体的に協議した事実は認められず、他に申告額についての具体的な協議の事実が認められるような事情もないと指摘。

したがって、その協議はなかったと認められるから、本件通達(1)の場合には該当しない。そして、本件価額弁償金の金額は、対象財産が特定され、かつ、本件和解時に合意された当該対象財産の通常の取引価額を基として決定されたものであるから、本件通達(2)の場合に該当するので、請求人の相続税の取得財産の価額に算入する金額は、本件通達(2)に定める方法により計算すべきであるとして、第二次納税義務納付告知処分を全部取り消した。

2020年7月から9月分の裁決事例は↓
https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/120.html