2021-04-22
相続した土地所有権の放棄を認める「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」は4月1日に衆院を通過し、4月13日から参院法務委員会での実質審議に入っている。衆院法務委員会での採決では全会一致で可決しており、今国会での成立は確実な見通しとなっている。成立すれば、法律の公布の日から2年を超えない範囲内で、政令で定める日から施行されることになる。
この法案は、相続又は遺贈による取得土地を手放して、国庫への帰属を可能とする制度の創設だが、対象土地が一定の土地に該当しないことが要件。法務大臣の承認を受けなければ適用されない。該当しないのは、(1)建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地、(2)土壌汚染や埋設物がある土地、(3)崖がある土地、(4)権利関係に争いがある土地、(5)担保権等が設定されている土地、(6)通路など他人によって使用される土地。
法務大臣の承認後、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付することによって国庫帰属される。法務省の参考資料によると、200平方メートルの国有地(宅地)の管理費用(10年分)は80万円程度(柵・看板設置費用、草刈・巡回費用)としている。法案提出の背景には、相続によって望まない土地を取得した者の負担感が大きく、管理不全化を招いているとの指摘がある。土地所有権の放棄の可否について現行民法に規定はない。
法務省では、所有者不明土地の増加の社会問題化から、所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化の両面から、総合的に民事基本法制の見直しを行うため、今国会で新法となる相続取得土地の国庫帰属法案と、民法等の一部改正法案の2つの法案を提出している。相続等により取得した土地の所有権を国庫へ帰属させる、ということは税務上の取扱いも関わってくる。2022年度税制改正で必要な措置が図られるとみられている。
民法等の一部改正法案は、不動産登記法を改正して、これまで任意とされてきた相続登記や住所変更登記の申請を義務化するとともに、民法を改正し所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するもの。また、長期間経過後の遺産分割を見直し、相続開始から10年を経過したときは、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みを創設する。