小規模宅地等の特例適用には相続人全員の同意が必要

相続税で関心の高い小規模宅地等の特例は、一定の宅地等の評価額を最大80%減額できる特別措置なので、適用の有無が税額に大きな影響を与える。同特例の適用要件は色々あるが、その一つに、相続税の申告において特例を受ける際、特例対象宅地等を取得した相続人が複数いる場合には、その全員の同意を得ることがある。相続税申告に当たり同意を証する書類(相続税申告書第11・11の2表の付表1)の提出が必要となる。

特例の対象となる宅地等は、相続開始直前の利用区分や要件に応じて、「特定事業用宅地等」(限度面積200~400平方メートル、減額割合50~80%)と「特定居住用宅地等」(同330平方メートル、80%)に分けられる。特例対象宅地等は限度面積が決められているため、特例対象宅地等が複数ある場合は、適用できる土地とできない土地が出てくる。そのため、小規模宅地の特例を使う宅地は選択適用となる。

つまり、小規模宅地の特例はあくまで“特例”であって、納税者自ら適用を受けることを選択するものなのだ。その適用を受けられる特例対象宅地等を複数人が取得した場合には、その取得者全員が同意の上で特例の適用を受ける宅地等を選択するものとして、その選択について全員の“同意を証する書類”(遺産分割協議書など)を相続税の申告書に添付することが必要になるわけだ。

これは、たとえ遺言書があって、1人の相続人に全ての土地を相続ずるという内容であったとしても認められないのだ。国税不服審判所の裁決事例(2014年8月8日裁決)に小規模宅地の特例合意について争われたものがある。裁決は、特例の解釈は厳格にされるべきとした上で、相続人間で遺言書無効確認の争いがあったとしても、相続人全員の同意書が出されていない以上、特例の適用は認められないと判断している。

なお、“同意を証する書類”について、申告書に添付する付表の同意欄には、特例対象宅地等を取得した者全員の氏名を記入するだけでよく、別途同意書なるものを作成して提出する必要はない。また、現在では手書きで申告書を作成するケースは少なく、パソコンで作成するものが多いと思われるが、この同意欄に記入する氏名についても、各人の自署である必要はなく、パソコン入力で認められるという。