所得税等を差し引いて国に納める義務のある者とは

会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引くことになっている。そして、差し引いた所得税等は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければならない。この所得税等を差し引いて、国に納める義務のある者を源泉徴収義務者という。

源泉徴収義務者となる者は、会社や個人だけではない。給与などの支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団なども源泉徴収義務者になる。ただし、常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その支払う給与や退職金について源泉徴収をする必要はない。また、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収をする必要はない。

例えば、給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はない。なお、国内において会社や個人が、新たに給与の支払を始めて、源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与支払事務所等を開設してから1ヵ月以内に提出することになっている。この届出書の提出先は、給与を支払う事務所、事業所その他これらに準ずるものなどの所在地を所轄する税務署長だ。

ただし、個人が新たに事業を始めたり、事業を行うために事務所を設けたりした場合には、「個人事業の開業等届出書」を提出することになっているので「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はない。ところで、個人事業主は、仕事の契約先に「源泉徴収してもらうもの」と思いがちだが、従業員を雇用して給与を支払っている場合、個人事業主も源泉徴収義務者になる。

源泉徴収義務者になるのは、個人経営から法人経営へ移行した(いわゆる法人成り)、正社員、アルバイトなど、雇用形態を問わず従業員を雇用したり、青色事業専従者に給与を支払っている場合などがある。一方で源泉徴収義務者にならないのは、人を雇わず、外注もせずに完全に1人で事業を行っている、雇用しているのが常時2人以下の家事使用人のみ、デザイナーなどに業務を外注しているが、従業員を雇用していない場合などが該当する。