2021-06-29
納税者が国税当局の処分に不満がある場合は、税務署等に対する再調査の請求や国税不服審判所に対する審査請求という行政上の救済制度と、訴訟を起こして裁判所に処分の是正を求める司法上の制度がある。国税庁・国税不服審判所がこのほど公表した再調査の請求や審査請求、訴訟の概要によると、今年3月までの1年間(2020年度)の再調査の請求・審査請求・税務訴訟を通しての納税者救済・勝訴割合は9.9%となった。
再調査の請求の発生件数は、申告所得税等(▲28.5%の391件)など全ての税目や徴収関係も減少し、全体では前年度から▲26.4%の1000件となった。処理件数は、「取下げ等」125件、「却下」95件、「棄却」679件、「一部取消」96件、「全部取消」4件の合計999件(前年度比▲34.0%)。納税者の主張が一部でも認められたのは計100件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度(12.4%)から▲2.4ポイントの10.0%だった。
また、国税不服審判所への審査請求の発生件数は、申告所得税等(▲2.3%の754件)や法人税等(▲36.4%の321件)などほとんどの税目が減少したことから、全体では前年度から▲13.0%の2229件。処理件数は、「取下げ」199件、「却下」93件、「棄却」1803件、「一部取消」168件、「全部取消」65件の合計2328件(前年度比▲18.2%)だった。納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は同▲3.2ポイントの10.0%となった。
一方、訴訟となった発生件数は、所得税(▲26.3%の56件)や消費税(▲54.5%の15件)、徴収関係(▲27.3%の24件)など多くの税目が減少したことから、全体では前年度を▲26.0%下回る165件だった。訴訟の終結件数は、「取下げ等」8件、「却下」14件、「棄却」144件、「国の一部敗訴」7件、「国の全部敗訴」7件の合計180件(前年度比▲16.7%)。国側の敗訴(納税者勝訴)割合は同▲1.9ポイントの7.8%となった。
このような納税者救済・勝訴割合は、あくまでも結果論だが、全体でみると、2020年度中に再調査の請求・審査請求・訴訟を通して納税者の主張が一部でも認められたのは、処理・訴訟の終結件数の合計3507件(前年度4575件)のうち347件(同583件)で、その割合は9.9%(同12.7%)と、再調査の請求、審査請求・訴訟の全ての救済割合が減少し、前年度に比べて▲2.8ポイントで推移している。
2020年度における再調査の請求の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/saichosa/index.htm