「厳正な調査」と「簡易な接触」で効率的な調査推進

国税庁は「国税庁レポート2021」を公表し、その中で適正・公平な課税の推進を掲げた。同庁では、様々な角度から情報の分析を行い、不正に税金の負担を逃れようとする悪質な納税者に対しては、適切な調査体制を編成し、「厳正な調査」を実施する一方で、その他の納税者に対しては、文書や電話での連絡などによる「簡易な接触」も行うなど、限られた人員等をバランスよく配分し、効果的・効率的な事務運営を心掛けている。

調査において重点的に取り組んでいる事項として、消費税は、税収の面で主要な税目の一つであり、国民の関心も極めて高いことから、一層の適正な執行に努めている。特に、虚偽の申告により不正に還付金を得ようとするケースについては、調査などを通じて還付原因となる事実関係を確認し、不正還付防止に努めている。また、金密輸に伴う輸入消費税の脱税への対応についても、税関当局との一層の連携を図っている。

増加する海外への投資や海外取引などについては、国外送金等調書を始めとする資料や海外当局との租税条約等に基づく情報交換制度のほか、共通報告基準(CRS)に基づく非居住者の金融口座情報などによって得た情報を活用し、実態解明を行い、深度ある調査を実施。特に、富裕層については、多様化・国際化する資産運用から生じる運用益に対して適正に課税するとともに、将来の相続税の適正課税に向けて情報の蓄積を図っている。

また、無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、資料情報の更なる収集・活用を図るなど的確に無申告を把握し、積極的に調査を実施している。例えば、会社員が自身のホームページに企業広告等を掲載することにより得ていた収入(アフィリエイト収入)に関して、給与と合わせて確定申告をする必要があったが、無申告だった事実を把握した調査事例を報告している。

他方、近時、シェアリングエコノミー等の新分野の経済活動が広がりを見せるなか、国内のみならず、国際的にも、適正課税の確保に向けた取組みや制度的対応の必要性が課題として共通認識されている。国税庁としては、こうした分野に対する適正申告のための環境作りに努めるとともに、情報収集を拡充。これにより、課税上の問題があると見込まれる納税者を的確に把握し、適正な課税の確保に向けて、行政指導も含めた対応を行っているという。