2021-09-29
改正民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)が本年4月に成立し、不動産(土地・建物)の相続登記が義務化される。所有者が亡くなったのに相続登記がされないと、登記簿を見ても持ち主が分からず、復旧・復興事業等や取引が進められないという問題が起きている。この「所有者不明土地問題」の発生を予防する観点から、その主要な発生原因である相続登記の未了や住所変更登記等の未了に対応するため、不動産登記法が改正された。
相続登記の申請の義務化は、2024年からスタートする予定で、具体的な時期は今後決められる。また、スタートから3年間の猶予期間がある。新制度では、正当な理由がないのに、不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしないと、10万円以下の過料の罰則の対象となる可能性がある。例えば、関係者が多くて必要な資料を集めることが難しい場合などは、罰則の対象にはならない。
制度がスタートした後、不動産を相続する場合に、相続人の間で遺産分割の話合いが整ったときには、その結果を踏まえた登記をすることになる。話合いが難航した場合は、ひとまず、簡易な申請義務履行手段として新たに作られた「相続人申告登記」の手続きをとることで、義務を果たすこともできる。この手続きは、自分が相続人であると申告して、それを示す戸籍を出せば、一人で行うことができる。
また、相続登記の申請の義務化に伴い、登記漏れを防止する観点から、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、被相続人等に証明する「所有不動産記録証明制度」や、所有権の登記名義人の相続に関する不動産登記情報の更新を図る方策の一つとして、登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から取得した死亡情報について符号によって表示する制度が新設されている。
そのほか、住所変更登記等の未了に対応するため、所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける。「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料の罰則の対象となる可能性がある。また、申請義務の実効性を確保するための環境整備策として、登記官が、他の公的機関から取得した情報に基づき、職権的に住所変更登記等をする新たな仕組みも導入される。