2022-02-15
インボイス制度が2023年10月1日から実施されるが、実務家の間では、これを契機とした取引条件の見直しは独占禁止法上問題ではないかとの疑問が呈されている。しかし、公正取引委員会は、「仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度実施を契機に取引条件を見直すこと自体が、直ちに問題とはならないが、見直しに当たっては、『優越的地位の濫用』に該当する行為を行わないよう注意が必要」との考えを示している。
取引上優越した地位にある仕入側の事業者(買手)が、インボイス制度実施後の免税事業者との取引で、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉で、仕入税額控除が制限される分、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられても、独禁法上問題とはならない、との考えだ。
仕入税額控除が制限される分とは、インボイス制度実施後3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることを指す。しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、買手の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合であって、免税事業者が今後の取引の影響等を懸念して受け入れざるを得ない場合には、優越的地位の濫用として、独禁法上問題となるという。
また、商品・役務の成果物の受領拒否、返品については、取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、仕入先から商品を購入する契約をした後において、仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否することは、その仕入先が今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、優越的地位の濫用として問題となる、との考えを示している。
同様に、その仕入先から受領した商品を返品することは、どのような場合に、どのような条件で返品するかについて、仕入先との間で明確になっておらず、仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合、その他正当な理由がないのに、仕入先から受領した商品を返品する場合であって、その仕入先が今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、優越的地位の濫用として問題となる、としている。