調査の約98%の酒類業者が原価割れ販売〜国税庁

国税庁は、酒類業者に対し、公正なルールに則していない取引があった場合には合理的な価格設定を行うように指導するなどしているが、同庁が2016年6月までの1年間(2015事務年度)に実施した酒類の取引状況等実態調査では、調査対象の約98%の酒類販売場等において総販売原価を下回る価格で販売するなど、利益を度外視した価格設定がみられた。同庁は、これらの酒類販売場等に対し改善指導を行っている。

国税庁は、2015事務年度に約20万場の酒類販売場等のうち、チラシ広告などの情報から取引に問題があると考えられた1429場を一般調査した。その結果、全体の98.4%に当たる1406場において「総販売原価を下回る価格で販売するなど合理的な価格設定がされていない」ことが分かった。一般的には酒類の販売価格は、仕入価格(または製造原価)、販売費及び一般管理費などに利潤を加えたものとなるはず、とされている。

一般消費者に販売している小売業者は、調査した1284場のうち99.0%に当たる1268場で日常的に廉価販売を行い、このうち28.0%に当たる355場は仕入価格(製造原価)をも下回る価格で販売するなど、顧客獲得のため採算度外視で販売していた。そのほか、こうした仕入価格を下回る価格での販売が認められたものは、卸売業者38場、製造業者16場あり、調査全体では28.6%に当たる409場あったことが明らかになった。

例えば、卸売業者のA社は、対象酒類の仕入と密接に関連しない受取リベートを加味して価格設定していたため、ビール系飲料、連続式蒸留しょうちゅう及び清酒の一部について、仕入価格を下回る価格で販売していた。また同社は、取引先に対して、新商品(ビール)を導入させるため、1ケース(350ミリリットル×24本)当たり仕入価格を346.16円(仕入価格の9.1%)下回る価格で販売していたことが判明している。

なお、調査では、そのほか、特定の取引先に対してのみ合理的な理由なく差別的な取扱いをするなど「取引先等の公正な取扱いが行われていないもの」が60場、取引上優位にある者が取引先に対して一方的な要求を行うなど「公正な取引条件の設定がなされていないもの」が5場、支払基準が不明確なリベートを支払うなど「リベート類の提供が透明かつ合理的でないもの」が70場認められたという。

取引に問題があった事例は↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/koseitorihiki/170210/pdf/01.pdf