2017-02-27
2016年4月に施行された特許法改正を受けた職務発明の税務上の取扱いについて、職務発明をした社員等に支払う補償金などの「相当の利益」は「雑所得」として取り扱うと、国税当局が見解を示した。これは、職務発明による特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる制度(使用者原始帰属制度)を導入した場合の「相当の利益」に係る税務上の取扱いについての事前照会に対し、名古屋国税局が文書回答でその事前照会を認めたもの。
職務発明について特許を受ける権利は、かつては発明者(社員等)に帰属し、これを会社等が承継した場合には「相当の対価」を支払うとされていた。2015年の特許法改正で見直され、社員等の職務発明について、契約、勤務規則などであらかじめ会社に特許を受ける権利を取得させると定めていれば、特許を受ける権利はその発生時から会社に原始的に帰属し、社員等は会社から「相当の利益」の支払いを受ける権利を有することとされた。
照会者の企業は、この使用者原始帰属制度を導入し、同社の職務規程を見直した上で、職務発明をした社員等に対し、「相当の利益」として、特許出願、特許権の設定の登録、登録された特許の実施又は他者への実施許諾、登録された特許の他者への譲渡などのタイミングで補償金を支払うこととし、その支払いを受ける権利は、社員等(発明者)が退職した後も存続し、死亡したときは相続人が承継するものとした。
本件補償金の税務上の取扱いについては、特許を受ける権利の移転によるものでないので譲渡所得ではなく、「発明者」としての地位に基づいて支払いを受けるもので、退職・死亡後も継続して支払われるので給与所得でもなく、職務発明に係る特許を受ける権利を会社に原始的に取得させることで生じるのだから、臨時・偶発的な所得である一時所得にも該当しないなどとし、いずれにも該当しないことから「雑所得」に該当すると判断した。
また、本件補償金は、発明者である社員等が特許権を持たない状態で、「相当の利益を受ける権利」に基づき支払いを受ける金銭であり、工業所有権等の使用料とはいえないため「報酬・料金等」に該当せず源泉徴収は不要とした。なお、本件補償金は、いずれも職務発明をした社員等から特許を受ける権利を譲り受けるなど何らかの資産の譲渡等を受けることの対価としての支出ではないことから、消費税の課税対象ではないとしている。
この件は↓
http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/bunshokaito/shotoku/170206/besshi.htm#a01