上場株式の配当所得に係る課税方式の選択が不可に

上場株式等の配当所得等に係る課税方式については、現行では所得税と個人住民税において異なる課税方式が選択できる。例えば、所得税では総合課税又は申告分離課税を選択し、個人住民税では申告不要制度が選択できる。2021年分の所得税の確定申告書から個人住民税に係る附記事項が新設され、個人住民税において申告不要とする場合には、確定申告書の提出のみで申告手続きが完結できるようになっている。

ところが、2022年度税制改正において、個人住民税については、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させる見直しが行われる。これに伴い、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用要件が、所得税と個人住民税で一致するよう規定整備が行われる。また、特定口座のうち、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得等についても、同様に、個人住民税と所得税を一致させる方向で見直される。

この見直しの背景には、不公平感の是正や申告手続きの簡素化などがある。というのも、上場株式等の配当等について、所得税では総合課税又は分離課税を選択し、個人住民税では申告不要制度が選択されることによって、所得税・個人住民税だけでなく、国民健康保険等の保険料や医療機関における窓口の負担にまで影響が及ぶことになり、税の公平性という観点から問題点が指摘されていた。

この改正は、その周知の観点から、2024年分以後の個人住民税から適用され、所要の経過措置も設けられる予定だ。つまり、2023年度分までは、所得税では総合課税又は分離課税を選択し、個人住民税では申告不要制度を選択できることになる。しかし、適用開始後は、所得税・個人住民税を併せて申告不要を選択するのか、申告するのかの判断が実務上の大きなポイントとなる。まだ時間的な余裕はあるが、対応の検討も必要だろう。