2017-03-03
固定資産税を巡る訴訟で宇都宮地裁が昨年12月、栃木県那須塩原市の旅館が建物の税額が高すぎるとして減額を求めた主張を認める判決が下し注目されている。旅館側の主張は、「那須塩原地域の観光客は過去12年間で24%減少しており、建物の需要と税額がかけ離れている」というもの。宇都宮地裁は、この主張を認め、税額算定の基礎となる固定資産評価額の15%引下げが適正だとした。市側は控訴する方針という。
固定資産税の課税対象となる家屋等の価格は、自治体が固定資産評価基準の定めに基づき算定する。家屋の損耗状況に応じて減点評価するが、必要があるものはさらに家屋の「需給事情による減点補正」を行うこととされている。この需給事情による減点補正は、「建築様式が著しく旧式となっている家屋や、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる家屋」などについて適用される。
ただし、この減点補正が適用されるケースは少なく、資産評価システム研究センターが2006年9月に実施した調査では、需給事情で減額補正した自治体は全体の11%と、約9割が適用していない。減点補正が適用されたものは、例えば「積雪量が多く寒冷な豪雪地帯にある家屋」など極めて限定された場合にしか認められてこなかった。また、専門家は「需要減は土地の評価額に反映するのが基本で、建物の減額は例外的」という。
こうした減点補正の運用実態のなか、ゴルフ場が「利用客の減少により集客力がなくなった」として、クラブハウスや従業員宿舎などのゴルフ場の建物の評価の減点補正の適用の有無が争われた事案で、最高裁がゴルフ場の建物に対して58%という減点補正率を認めた例がある(2011年12月9日判決)。さらには、愛知県岡崎市では、市内にある大型商業ビルの運営会社が減点補正の適用を巡って提訴しており、名古屋地裁で係争中だ。
このように、豪雪地帯など限定的な場面での適用が認められてきた減点補正を巡って、旅館や商業施設などからの訴訟も起こっており、これらの判決次第では、全国の旅館や商業施設などに影響が及ぶものと思われる。観光客が減少する中で、特に地方の温泉旅館やゴルフ場など、高額な固定資産税に苦しんでいるところも少なくない。固定資産税の減額を求める声も大きくなっていきそうだ。