2017-04-07
欠損金の繰越控除制度とは、確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、翌事業年度に繰り越し、その各事業年度の所得金額に一定の割合を乗じた金額を損金に算入できるというもの。2015年度税制改正では、中小法人等以外の大法人(資本金1億円超の普通法人等)の控除限度額の段階的な引下げや、新設法人の特例などが設けられている。
中小法人等以外の大法人については、2015年4月1日以後の事業年度開始の日に応じて、所得金額の50%から65%まで控除制限が設けられた。具体的には、(1)2015年4月1日から2016年3月31日開始事業年度は65%、(2) 2016年4月1日から2017年3月31日開始事業年度は60%、(3) 2017年4月1日から2018年3月31日開始事業年度は55%、(4)2019年4月1日開始事業年度は50%とされている。
一方、中小法人等(資本金1億円以下の普通法人や公益法人・協同組合等)については、所得金額の全額を上限に損金算入でき、2015年度税制改正では、新設法人についても、設立の日から7年を経過する日までの期間内に属する各事業年度については、中小法人と同様に、所得金額の全額が控除限度額とされている。この新設法人に対する特例については、資本金基準が設けられていないため、大法人でも適用可能となる。
新設法人は、中小法人等(資本金1億円超の法人)以外の法人のうち、資本金5億円以上の大法人の100%子会社等でない法人が該当する。したがって、例えば、資本金10億円の大法人に完全支配されている新設法人は、上記の要件に該当してしまうため、新設法人の特例対象にはならない。しかし、例えば資本金3億円の法人に完全支配されている新設法人については、その新設法人の資本金が5億円超の大法人であっても、特例対象となる。
ただし、特例対象となった大法人が上場した場合には、上場日以後に終了する事業年度では新設法人の特例は適用できず、控除制限が適用されることになる。なお、2016年度税制改正によって、2018年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年(現行9年)とされる。これに伴い、欠損金の繰越控除制度の適用に係る帳簿書類の保存期間や、法人税の欠損金額に係る更正の期間制限等も10年に延長される。