貯蓄から投資への武器として期待高まるNISA制度

2023年度税制改正の焦点は、岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」を実現するための柱となる少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充とみられている。政府は、新しい資本主義を実現していくため、内閣に、新しい資本主義実現本部を設置しているが、17日に開催された資産所得倍増分科会に提出された「資産所得倍増に関する基礎資料集」は、日本の家計金融資産の現状やNISAの利用・口座の開設状況などを示している。

基礎資料集によると、日本の家計金融資産については、60代以上の保有比率が6割を超えている(総務省「全国家計構造調査」2019年)。また、長期・積立・分散により投資を行うことで、長期的には資産形成に大きな効果がある。2000年末から毎年一定額を日経平均に投資した場合には収益率は100%を超えるが、他方で、同額を定期預金で貯蓄した場合の収益率は1.3%にとどまり、貯蓄では資産形成に大きな効果を見込むことは難しい。

今後の資産形成の手段として期待されるNISAだが、制度の開始以来、着実に利用者数が増加し、現在は1779万口座と国民の7人に1人が保有。NISAを利用する個人の7割は年収500万円未満、また、利用者の過半数は世帯保有金融資産が1000万円未満で、我が国の家計の平均保有金融資産は単身世帯が1062万円、2人以上世帯で1563万円であることに鑑みると、NISA制度は中間層を含めた幅広い層の資産形成に活用されている。

各世代のNISA口座の開設状況を人口比でみると、各世代で概ね2割程度の活用にとどまる。30代まではつみたてNISA、40代以上では一般NISAの開設が多い一方、世代別のNISA口座数の推移をみると、各世代でNISA口座の開設が増加している。特に、2020年から20~30歳代の口座開設が進んでおり、NISAは幅広い世代に活用されており、特に足元では、20歳から30歳代の若年層の買付が伸びている。

日本証券業協会等のアンケート調査では、NISAの活用で少額からの投資が可能なことや長期投資・分散投資の重要性、財産形成の必要性を認識するなど、投資に対してイメージがポジティブに変化していることが判明。2024年1月施行予定の新NISA口座を利用しない予定の人へのアンケートによると、その理由は、45%が「2階建て制度が複雑なため」、31.5%が「1階部分で積立投資を行いたくないため」となっている。

このように、基礎資料集からは、少額からの投資が可能なことから20歳から30歳代の若年層にもNISAの活用が浸透しつつあることや、長期投資・分散投資の重要性が認識されてきたこと、また、非課税枠が120万円から122万円に増え、5年間で最大610万円が非課税になる新NISA制度への不満などが明らかになっている。貯蓄から投資への大きな武器と期待されるNISA制度がどのように改正されるのか注目される。

資産所得倍増に関する基礎資料集は↓
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/bunkakai/sisanshotoku_dai1/siryou3.pdf