無申告者の1人平均申告漏れは2923万円と高額

無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、的確かつ厳格な対応が求められる。無申告者は、その存在自体の把握が難しいことから、国税当局は、有効な資料情報の収集や活用を図り、積極的に調査を実施している。国税庁が今年6月までの1年間(2021事務年度)に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は3828件(前事務年度2993件)行われた。

実地調査(特別・一般)の結果、申告漏れ所得金額の総額は1119億円(前事務年度768億円)把握。追徴税額は、総額で190億円(同87億円)、1件当たりでは過去最高の497万円(同292万円)だった。2021事務年度は実地調査(特別・一般)全体が2万4067件行われているから、全体の約16%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査(同)全体の申告漏れ所得金額3882億円の約29%が無申告者に係るものだったことになる。

1件当たりの申告漏れ所得金額は2923万円となり、前事務年度の2565万円から14.0%増加し、実地調査(特別・一般)全体の1件当たり申告漏れ所得金額1613万円の約1.8倍と高額だ。1件当たりの追徴税額も所得税の実地調査(特別・一般)全体の 323 万円の 約1.5 倍だった。こうした調査結果からいえることは、結構高額な所得がありながら、国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかということだろう。

また、消費税の無申告者に対しては、2021事務年度において実地調査(特別・一般)5257件(前事務年度3294件)が行われた結果、追徴税額は129億円、1件当たりでは245万円となった。同事務年度の消費税に係る実地調査(同)全体は1万3559件行われており、全体の約39%が無申告者に対する調査に充てられ、消費税の実地調査(同)全体の追徴税額228億円の約57%が無申告者に係るものだった。

調査事例では、スマートフォンのマッチングアプリを介してコンパに参加し収入を得る、いわゆる「ギャラ飲み」を業として多額の収入を得ていたにもかかわらず、無申告だった女性Aの事案が報告されている。無店舗型のキャバクラのコンパニオン収入について、部内資料等から所得の稼得状況を把握して課税したものだ。Aに対しては、所得税3年分の申告漏れ所得金額約4000万円について、追徴税額(加算税含む)約1100万円が課された。