2023-01-24
2023年度税制改正において、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けて、経営者の大胆な挑戦を可能とし、働き手に新たな活躍の場を提供する新たな産業の創出・育成を推進するため、スタートアップ支援に個人の投資を促す税制を強化する。創業数と創業規模の両面でわが国のスタートアップの成長を促していくためには、「創業」、「事業展開」、「出口」の各段階を通じたインセンティブの充実が極めて重要との考えがある。
まず、特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例を創設する。中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、その設立の日の属する年において、その設立の日以後の期間が1年未満の中小企業者であることなどの一定要件を満たす株式会社により設立の際に発行される株式(「特定株式」)を払込みにより取得した個人(その株式会社の発起人に該当することなどの要件を満たすものに限る)が対象となる。
その個人が、取得に要した年分の一般株式等・上場株式等に係る譲渡所得等の金額から、その特定株式の取得に要した金額の合計額を控除する特例を創設し、特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例と選択して適用できる。また、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の適用対象となる範囲に、上記の特定株式を加える。
特例を適用する場合において、その取得をした特定株式の取得価額は、その控除をした金額のうち20億円を超える部分の金額を、その取得に要した金額から控除する金額とする。これまでのスタートアップへの投資は、個人投資家について講じられた税制上の特例措置であるエンジェル税制だが、2023年度税制改正では、保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合の特例措置を新たに創設したものだ。
次に、エンジェル税制の見直しがある。個人投資家がスタートアップ企業に出資した際に優遇するエンジェル税制を見直し、新たな非課税措置を設ける。現行は、投資家が保有株の売却益をスタートアップに再投資すると、その時点では課税繰延べとなり、スタートアップ株を売却する段階で課税するが、改正後は、上場株式等を売却しスタートアップに再投資する場合に売却益を20億円まで非課税とし、上限を超えた分は課税繰延べとなる。
そのほか、スタートアップへのニューマネー出資の一定額を所得から控除するオープンイノベーション促進税制について、M&Aに適用できるように、ニューマネーを伴わない既存株式の取得も対象とする。スタートアップの成長に真につながるように、M&Aから5年以内に成長率や投資規模等の要件を満たした場合には、その後も減税メリットを継続させる仕組みとし、スタートアップの成長を強力に促すものとする。