防衛費増額に係る財源は法人・所得・たばこの3税で

2023年度税制改正の審議において注目されていた一つに、防衛費増額に係る財源の一部を税金でまかなう案があった。昨年12月に閣議決定された2023年度税制改正大綱では、法人税、復興特別所得税、たばこ税の3税で確保することが盛り込まれた。政府は、今後5年間の防衛費を43兆円程度とする方針だが、2027年度単年でみると防衛費は現状から4兆円ほど増える。このうち1兆円強を増税でまかなう方針だ。

税制改正大綱では、我が国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保するため、税制部分については、2027年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、2027年度において、1兆円強を確保するとした。具体的には、法人税、所得税及びたばこ税について増税措置を講ずるとしたが、施行時期は2024年以降の適切な時期としている。

法人税については、湾岸戦争の多国籍軍への戦費支援や震災復興の財源確保の際と同様に、本来の税率を変えずに特例措置を上乗せする付加税方式を採る。具体的には、法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課すが、中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとする。元の法人税額が少ない多くの中小企業は、事実上、増税対象から外れることになる。

所得税は、所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課すとした。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。復興所得税は2037年までの25年間の期限を延長して、その一部を防衛財源に振り分ける。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとする。

廃炉、特定復興再生拠点区域の整備、特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた具体的な取組みや福島国際研究教育機構の構築など息の長い取組みをしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確実に確保することとする。また、たばこ税は、3円/1本相当の引上げを、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保した上で、段階的に実施するとした。