2023-03-01
インボイス制度における適格請求書等保存方式の下では、原則として、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等につき、課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間の保存が仕入税額控除の要件となる。簡易課税制度を選択している場合は、課税期間における課税標準額に対する消費税額にみなし仕入率を掛けて計算した金額が控除対象仕入税額となるので、適格請求書などの請求書等の保存は仕入税額控除の要件とはならない。
帳簿の記載事項は、(1)課税仕入れの相手方の氏名又は名称、(2)課税仕入れを行った年月日、(3)課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)、(4)課税仕入れに係る支払対価の額。これらの記載事項については、区分記載請求書等保存方式からの変更はない。課税仕入れの相手方の氏名又は名称については、課税仕入れの相手方が特定できる場合、屋号や省略した名称などの記載でも差し支えない。
また、取引先コード等の記号・番号等による表示でかまわない。課税仕入れに係る資産又は役務の内容の記載は、請求書等に記載されている取引内容をそのまま記載することまで求めているものではない。商品の一般的総称でまとめて記載するなど、申告時に請求書等を個々に確認することなく、軽減税率の対象となるものか、それ以外のものかを明確にし、帳簿に基づいて、税率ごとに仕入税額控除を計算できる程度の記載で差し支えない。
そのほか、商品コード等の記号・番号等による表示でもかまわないが、この場合も、課税資産の譲渡等であるか、また、軽減対象資産の譲渡等に係るものであるときは、その判別が明らかとなるものである必要がある。軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨については、税区分欄を設けずに、軽減税率対象品目に「※」や「☆」等の記号を記載し、その記号が軽減税率対象品目を示すことを欄外などに記載して明らかにする方法もある。
保存が必要となる請求書等の範囲は、(1)適格請求書又は適格簡易請求書、(2)適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類、(3) 卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の販売などの取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類、(4)(1)から(3)の書類に係る電磁的記録、となっている。
なお、現行(区分記載請求書等保存方式)との相違点について、現行では、仕入先から交付された請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がないときは、これらの項目に限って、交付を受けた事業者自らが、その取引の事実に基づき追記することができるが、適格請求書等保存方式の開始後は、このような追記をすることはできないので注意が必要だ。