所有者不明土地対策のために住民基本台帳法改正へ

政府は、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を利用することができる地方公共団体の事務に、所有者不明土地法等に基づく事務を追加するため、住民基本台帳法を改正する。住基ネットの利用事務の拡大を目的に、今国会に提出予定の地方分権一括法案に、盛り込む。住民基本台帳は、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民に関する事務処理の基礎となるもの。

地方公共団体が、所有者不明土地が対象となる公共事業を行う場合、土地所有者等の現住所等を特定するため所有者の情報を取得する必要がある。また、法務局では、地方公共団体等からの求めに応じて、土地の所有権の登記名義人の死亡の事実の有無等を調査し、法定相続人を探索している。そして土地所有者探索事務を行うためには、相続人のいる市区町村に対して、住民票の写し等の請求(公用請求)等が必要となる。

これは、所有者等の現住所を速やかに特定する必要があるからだが、公用請求は件数が膨大であり、複数回要する場合もあることから、所有者等の現住所等の特定に時間を要する上に、地方公共団体等の事業実施者等にとっても、対応する市区町村にとっても負担となる。申請等の添付書類として住民票の写し等が必要とされる場合も、住民票の写し等を交付する市区町村の事務負担となっている。

そこで改正により、住基ネットを利用できる事務に所有者不明土地法等に基づく事務が追加されれば、住基ネットの利用で、公用請求や住民票の写し等の添付が不要になる。この結果、所有者等の現住所の速やかな特定が可能となり、各事務の円滑な実施に寄与し、市区町村では、公用請求への対応や住民票の写し等の交付に係る事務が減少し、行政事務が効率化され、申請書類等の削減により、申請等の手続負担が軽減される。

また、現行は、例えば、空き家の所有者の特定等のため、市区町村が戸籍謄本等の公用請求を行う場合、本籍地の市区町村への請求が必要だが、1ヵ月程度の日数を要する場合がある。これを、市区町村の事務担当部局が、同一市区町村の戸籍担当部局に公用請求し、戸籍情報連携システム(2023年度末に稼動予定)を利用して戸籍情報の取得を可能とする。市区町村は、管理不全の空き家等に、速やかに改善依頼や勧告等が可能となる。