2023-04-05
国税不服審判所はこのほど、2022年7月から9月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、4事例(国税通則法関係1件、所得税法関係1件、法人税関係2件)と少なめだった。今回は、4事例全てにおいて、賦課決定処分を全部取消し又は一部を取り消しており、実務家にとっても参考となると思われる。
ここでは、役人報酬における過大報酬の判定に係る事例を紹介する。この事例は、法人税の所得金額の計算上損金算入した代表取締役に対する役員給与の額について、原処分庁が、役員給与の額には不相当に高額な部分があり、その金額は損金の額に算入されないなどとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、代表取締役の職責を考慮せずに行われた原処分は違法として、原処分の一部の取消しを求めたもの。
原処分庁は、請求人の同業類似法人における代表者に対する役員給与の最高額と比較すると、請求人の代表取締役に対する役員給与の額は、極めて高額であり、明らかに不相当に高額な部分があるから、その最高額を本件代表者に対する役員給与相当額とし、本件役員給与の額のうち役員給与相当額を超える部分の金額は、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない旨主張した。
これに対して請求人は、本件代表者の職務は格別であり、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性を有するものではないから、本件役員給与の額について不相当に高額な部分の金額はない旨主張した。しかしながら、審判所の調査の結果、本件代表者の職務の内容が特別に高額な役員給与を支給すべきほどのものとは評価し難く、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性があるものと認められると指摘。
そして、本件代表者の職務内容に大きな変化はなく、請求人の収益の状況及び使用人給与の支給状況もおおむね一定であるところ、本件役員給与の額は同業類似法人の代表者に対する役員給与の額の最高額を上回るものであり、しかもその最高額を支給する法人は、請求人よりも相当に経営状況が良好と評価される点を鑑みれば、本件役員給与の額のうちその最高額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額であるといえるとも指摘した。
ただし、原処分庁が抽出した同業類似法人の中に、請求人とは業種の異なる法人が認められることから、同社を同業類似法人から除外した上で役員給与相当額を算定し、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額を計算すると、原処分の額を下回ることから、原処分の一部を取り消すのが相当との判断を示している。
2022年7月から9月分の裁決事例は ↓
https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/128.html