中小企業向け租税特別措置適用停止の判定方法に注意

2017年度税制改正では、多額の所得を得ており財務状況が脆弱とは認められない企業が、中小法人課税の適用対象となっているとの批判を踏まえ、一定所得金額を超える事業年度の租税特別措置の適用を停止する措置が盛り込まれた。具体的には、「法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を停止する」とされた。

この改正は、2019年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。この停止措置の適用前に適用期限を迎える租特についても、2018年度以降の税制改正で適用期限が延長された場合には、この租特の停止措置の適用対象に含まれる。この適用停止措置について、設立後3年を経過していない等の事由がある場合には、その計算した金額に一定の調整を加えた金額により判定するなどの判定方法が政令により明らかにされている。

確認すると、適用停止となるのは、各種租特適用前の3年以内に終了した各事業年度(基準年度)の所得金額の合計額をその各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じた金額が「15億円を超える法人」が該当する。そこで、政令から調整事由とそれに対する調整金額を具体的にみると、まず「3年以内に終了した各事業年度」がない、設立後3年を経過していない法人は、基準年度の所得金額の年平均額をゼロとすることができる。

次に、判定する際の所得金額が欠損金繰越控除後の金額とされていることのバランスから、欠損金の繰戻し還付の適用があった場合には、その還付の計算の基礎となった欠損金額相当額を、還付対象の基準年度の所得金額から減産する必要がある。また最後に、判定する法人が合併等により設立された場合や、支配関係がある法人を被合併法人等とする合併、休眠法人を合併法人等とする合併が行われたケースでの取扱いだ。

この場合には、原則として、その合併等に係る被合併法人等の所得の金額を、合併法人等の基準年度の所得金額に加算することを明らかにしている。このケースでは、基準年度がない場合に年平均額をゼロとする措置は適用されない。これは、法人の成り代わりによる租特の適用停止措置逃れを防止するためである。