信託型SOは権利行使時に給与課税と明記~国税庁

国税庁は、ストックオプション(SO)に関する税務上の一般的な取扱いをまとめたQ&Aを公表した中で、信託型SOは権利行使時に生じた経済的利益は給与所得に該当することを明記した。信託型SOは、発行会社(オーナー)が信託会社に金銭を信託して信託を組成するが、信託を経由して会社に貢献した役職員の貢献度(ポイント等)に応じたSOを付与できるなどの特徴があり、近年、スタートアップを中心に導入企業が増加していた。

また、信託型SOは、実務上、権利行使時に給与課税されないとの見解が広がっていたことが導入企業増加の背景の一つだった。それは、信託型SOが、信託が役職員にSOを付与していること(発行法人から付与されたものはないこと)や、信託が有償でSOを取得していることなどの理由から、権利行使時に給与課税の対象となる税制非適格SOに該当しないものと考えてられていたことによるものだった。

国税庁は今回のQ&Aにおいて、信託型SOの課税関係について、(1)法人課税信託には、組成時に受益者が存在しないので、発行会社等が信託会社に信託した金銭に対して、法人課税が行われる。(2)信託会社が信託型SOを適正な時価で購入した場合、経済的利益が発生しないので、課税関係は生じない。(3)発行会社が役職員を受益者に指定して、役職員にそのSOを付与した場合の経済的利益については、課税関係は生じない、とした。

役職員は、信託が購入の際に負担した額を取得価額として引き継ぐことになる。(4)役職員が信託型SOを行使して発行会社の株式を取得した場合、その経済的利益は、給与所得となると明記している。その経済的利益の額は、行使時の株価から取得価額として引き継いだ額と権利行使価額の合計額を差し引いた額となり、発行会社は、経済的利益について、源泉所得税を徴収して、納付する必要があるとしている。

その上で、信託型SOについては、 信託が役職員にSOを付与していること、信託が有償でSOを取得していることなどの理由から、上記の経済的利益は労務の対価に当たらず、「給与として課税されない」との見解があることに触れ、実質的には、会社が役職員にSOを付与していること、役職員に金銭等の負担がないことなどの理由から、上記の経済的利益は労務の対価に当たり、「給与として課税される」こととなるとの判断を示している。