査察の告発事案は全て有罪、平均懲役月数13.6ヵ月

査察、いわゆるマルサは、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査だ。調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられる。この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としている。

刑罰とは懲役や罰金だが、実をいえば古くは、実刑判決はなく、執行猶予と罰金刑で済んでいた。しかし、懲りない面々に対し“一罰百戒”効果を高めるため、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されている。先日公表された2022年度版査察白書によると、同年度中に一審判決が言い渡された61件の全て(100.0%)に有罪判決が出され、うち3人に対し実刑判決が言い渡されている。

実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役1年4月、他の犯罪と併合されたものが懲役2年8月だった。例えば、Jは、外国為替証拠金取引(FX)により多額の利益を得ていたものだが、数十もの他人名義での取引で所得を秘匿し、確定申告書を提出することなく法定納期限を徒過させ所得税を免れていた。Jは、所得税法違反等による前科の懲役刑の執行猶予期間中の犯行などだったため、懲役1年4月の実刑判決を受けた。

一審判決があった61件の1件当たり平均の犯則税額は4700万円、懲役月数は13.6ヵ月、罰金額は1200万円だった。査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながる。査察で告発されると、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もありうる。ちなみに、刑罰は10年以下の懲役、罰金は1000万円(脱税額が1000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっている。

2022年度査察白書によると、すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は139件で、このうち検察庁に告発した件数は74.1%(告発率)にあたる103件だった。この告発率74.1%は前年度を1.3ポイント上回り、4年連続70%台の高水準だった。つまり、査察の対象になると、7割程度が実刑判決を含む刑事罰の対象となる。くれぐれも甘い考えを起こさないでいただきたい。