日税連、「2024年度税制改正に関する建議書」を公表

日本税理士会連合会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができると税理士法に規定されており、この規定に基づき、税制改正に関する建議書を毎年取りまとめているが、6月22日に開催された第1回理事会において「2024年度税制改正に関する建議書」を決定し公表した。今回の建議書では、重要建議3項目のほか33項目の建議を盛り込んでいる。

重要建議項目の1番目では、中小法人の配当促進税制の整備を行うとともに、役員給与税制を見直すことを掲げた。中小法人について配当を行いやすい環境を整えるために、中小法人が配当を行う場合には、中小法人の所得のうち配当に充てられた部分に対する法人税率を低くするとともに、中小法人の個人株主が配当を受ける場合にも申告分離課税制度を認めることや配当控除を引き上げることを検討することを要望した。

役員給与は職務執行の対価であり、原則として損金の額に算入され、恣意性のあるものなど課税上弊害があるものについてのみ損金の額に算入されないのが本来の姿と考えられる。したがって、損金不算入とする役員給与を明示した上で、役員報酬及び賞与について株主総会等の決議によって事前に確定した金額の範囲までの部分については、不相当に高額なものを除き、原則として損金の額に算入すべきだとした。

次に、消費税の非課税取引の範囲を見直すこと。非課税取引として消費税法別表第一に掲げられる取引には、「税の性格から課税対象になじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」があるが、社会政策的な配慮に基づくものや日本郵便株式会社等が行う郵便切手類の譲渡は、課税取引とし、課税標準及び仕入税額控除の計算過程に取り込み、小規模事業者判定における売上高基準にも反映させ、計算をできるだけ平易にすべきことを求めた。

また、軽減税率制度を廃止し単一税率に戻すことを求め、消費税の軽減税率制度は、低所得者への逆進性対策としては非効率であること、「社会保障と税の一体改革」という当初の目的から乖離して歳入を毀損し、その補填のため標準税率のさらなる引上げや社会保障給付の抑制が必要となること、区分経理等により事業者の事務負担が増加していること等の理由から、早期の見直しを図り単一税率制度に戻すべきだとした。

3番目は、基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフトを進めることを要望。給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大なことや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除額を縮減した上で、基礎的な人的控除の額を引き上げるべきであり、その際には、負担調整の比重を個々の人的事情に左右されない基礎控除に移すことが望ましいとした。

日税連の2024年度税制意改正に関する建議書は↓
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/whatsnew/doc/kengisyo-R6.pdf