物価上昇がもたらす税収増、特徴は消費税の増加

第一生命経済研究所が発表した「物価上昇がもたらす税収増~22 年度決算概要のポイント~」と題したレポートによると、財務省から2022年度の一般会計決算概要見込みが示され、2022年度の決算税収額が明らかになった。2022年度の税収は71.1兆円と過去最高を更新。内訳をみると、所得税が2021年度21.4兆円→2022年度22.5兆円、法人税が同13.6兆円→同14.9兆円、消費税が21.9兆円→23.1兆円と基幹3税がいずれも増加した。

この背景には、コロナ禍からの経済正常化に伴い、雇用や賃金、消費や企業業績が回復して税収の増加につながったことがある。為替市場における円安も企業利益の増加を後押ししたようだ。基幹3税以外では相続税が2.8兆円→3.0兆円(+0.2兆円)、関税が0.9兆円→1.0兆円(+0.1兆円)などが増加。相続税は資産価格の上昇などが、関税については資源高×円安に伴う輸入増が影響したとみられる。

また、原油高をはじめとした資源価格の上昇、その価格転嫁に伴う物価上昇が消費税の増加につながった点が今回の税収増における大きな特徴となっている。2022年度の消費税は前年度から+1.2兆円増加したが、これは異例。過去にも同等以上の伸びになったことはあるのだが、いずれも消費税率の引上げやその期ズレ影響のある年だ。それらを除けば、消費税は導入以来最も大幅な伸びになったといえる。

政府は純剰余金2.6兆円の半額を防衛費増額の財源として充当する方針を示している。純剰余金の見込み額としていたのは1.4兆円(2012~2021年度の10年平均)だったが、今回の純剰余金はその約2倍だ。政府は防衛財源確保のために2024年以降に法人税などの増税を行う方針を示している。2025年以降に増税の先送りをするか否かが焦点となっているが、今回の純剰余金をもとにそのロジックを立てることはそう難しくはないとみている。

経済情勢から考えると、このまま税収の増加が止まるとも考えづらい。現在みえているアップサイドの要素として、(1)賃上げ加速と(2)円安・株高、が挙げられ、2023年度の所得税や法人税の押し上げ要因となりそうだ。全体としての伸びは2022年度対比では落ち着くとみられるものの、景気回復・物価上昇の持続の中で2023年度も税収増加が続くとみられている。

この件については↓
https://www.dlri.co.jp/files/macro/261694.pdf