東商、事業承継税制の申請期限の延長・恒久化を要望

東京商工会議所はこのほど、事業承継対策委員会における議論を踏まえ、「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」をとりまとめ発表した。意見によると、中小企業経営者の高齢化が進み、休廃業を選択した事業者の半数以上は直近の決算が黒字であり、このままでは中小企業の「価値ある事業」が失われていく恐れがある。さらに、その黒字の割合は近年減少傾向にあり、事業承継対策は急務となっている。

そこで、資産承継対策の重要な支援施策であり、期限が迫っている事業承継税制の延長・恒久化などを要望している。2018年に抜本拡充された事業承税制(特例措置)は、自社株式を贈与・相続した際の税金が全額猶予され、一定の条件により猶予税額が免除となる税制だが、特例措置の適用期限は2027年12月までとなっており、タイミングが合わず、利用したくてもできない事業者も存在する。

また、税制適用の前提となる「特例承継計画」の提出期限(申請期限)は2024年3月までと期限が迫っている。意見では、重点要望として、事業承継税制の延長・恒久化(国・東京都)を新たに掲げている。具体的には、事業承継税制特例措置の申請期限の延長(2024年3月末→2027年12月末まで)や、対象株式制限の撤廃や雇用維持要件の弾力化、納税猶予割合100%への引上げなど、事業承継税制一般措置の拡充(2028年1月から)だ。

そのほか、要望項目として、(1)事業承継税制の周知と正しい理解の促進、支援機関・税理士などの専門家・地域金融機関などを巻き込んだ対策の推進(国・東京都)、(2)事業承継税制の制度改善(国)として、都道府県への年次報告書・税務署への継続届出書の一本化、提出書類の不備に対する宥恕規定の明確化等、(3)事業承継税制適用後の支援・相談体制の充実(国・東京都)がある。

さらに、(4)自社株式を含め資産全体を踏まえた相続対策(遺留分への対応等)の推進、税理士・弁護士などの専門家の活用、(5)分散した株式の集約に向けた取組みの重要性の周知と支援強化(国・東京都)として、従業員承継での株式買取資金確保に向けた制度融資(日本政策金融公庫・信用保証制度等)の活用促進、などを要望項目として掲げている。(3)と(4)は新規の要望項目だ。

同意見の概要は↓
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1034533