2017-05-24
研究開発税制は、2017年度税制改正で、総額型の対象となる試験研究費にビックデータ等を活用した「第4次産業革命型のサービス開発」が追加されるなどの見直しが行われたが、その一環で、オープンイノベーション型と呼ばれるタイプの措置の運用改善が行われる。その背景には利用の低迷があり、租税特別措置の適用実態調査によれば、オープンイノベーション型の2014年度の利用実績は約3億円にとどまっている。
オープンイノベーション型とは、特別研究機関等、大学等、その他の民間企業等との共同・委託研究等の費用又は中小企業者に支払う知的財産権の使用料がある場合、企業が負担したこれらの特別試験研究費の一定割合を法人税から控除することができる仕組みだ。控除額は、特別試験研究費の額に、相手方が大学・特別研究機関等であれば30%、相手方が民間企業等であれば20%をそれぞれ乗じた額となる(控除上限は法人税額の5%)。
同制度を適用するためには、契約書等に一定の事項を記載することや、相手方による認定・確認等の手続きが必要で、その詳細は経済産業省が公表している「特別試験研究費税額控除制度ガイドライン」で確認することができる。今回、2017年度税制改正において運用の改善が図られるのは、(1) 対象費用の追加・変更の柔軟化、 (2) 対象費用の額の確認方法の簡素化、(3) 対象費目の拡大、の3点となる。
(1)は、契約変更があった場合、これまではその契約変更日以後に生じた費用しか対象にできなかったが、契約変更前に生じた費用であっても、その契約に係るものであることが明らかであり、その費用発生と契約変更日が同一事業年度であれば対象とする。(2)は、対象費用の額の確認について、これまでは費用内訳(明細書)と領収書等の突合が必要と考えられていたが、領収書等との突合までは求めないことを明確化した。
(3)は、これまでは共同・委託研究において、相手方に支払う費用については対象費目が限定されており、間接経費(光熱費や修繕費等)が含まれていなかったが、対象範囲を「当該研究に要した費用の総額」とすることで、その研究に必要な間接経費も含むものとした。これらの見直しの3点はいずれも「特別試験研究費税額控除制度ガイドライン」の改訂によって対応する((3)のみ省令改正事項もある)。