経産省、賃上げ税制の繰越控除措置創設など改正要望

各府省の2024年度税制改正要望が8月31日に出そろったが、経済産業省は、構造的・持続的な賃上げの実現や中小企業・小規模事業者の事業承継・成長支援などの観点から、“構造的・持続的な賃上げ”の実現に向けて、政府の長期的な方針を明確にするとともに、賃上げに関する企業の計画的な検討を促すため、租特期間を長期化すること、赤字の状況等でも賃上げに取り組む中堅・中小企業を対象とした繰越控除措置の創設を要望した。

今年の30年ぶりの高い水準の賃上げ率を一過性のものとせず、「構造的・持続的な賃上げ」を実現することが重要だとして、租特の延長期間の長期化に加えて、賃上げを行う企業の裾野の拡大に向けて、中堅企業に対する支援措置を強化するとともに、赤字等の厳しい業況の中にある中堅・中小企業の賃上げを後押しする観点から、税額控除額が控除の上限額を超えた場合に、控除しきれなかった金額の繰越しを認める措置の創設を求めた。

繰越控除措置を創設する必要性として、中堅・中小企業は大企業よりも赤字等の厳しい業況にある企業の割合が大きいため、中堅・中小企業にとって賃上げ促進税制は利用しにくいのが現状。したがって、賃上げを実施した年度以降に業績が改善したタイミングで税制の適用を受けられる形に税制を改正すれば、厳しい業況の中においても賃上げを行う中堅・中小企業を増やすことができるとの考えを示した。

また、経営者の高齢化の進展等を踏まえ、中小企業の事業承継を後押しし、生産性向上・成長を支援する観点から、法人版(特例措置)及び個人版事業承継税制(贈与税・相続税ともに100%を猶予)について、特例承継計画の提出期限の延長を行うとともに、本税制の適用期間における事業承継の取組み等も踏まえ、円滑な事業承継の実施のために必要な措置について検討することを求めた。

そのほか、中小法人の交際費課税について、販売促進手段が限られる中小法人にとって、交際費等は事業活動に不可欠な経費で、その措置は非常に重要であり、定額控除限度額(800万円)までの全額を損金算入可能とする特例措置の適用期限の延長や、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例について、償却資産の管理などの事務負担の軽減、事務処理能力・事務効率の向上を図るため、適用期限の2年間延長などを盛り込んでいる。

経産省の2024年度税制改正要望の概要は↓
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2024/zeisei_r/pdf/1_02.pdf