2022年度の滞納整理の訴訟提起は137件~国税庁

国税庁が先日公表した2022年度租税滞納状況によると、新型コロナウイルス感染症の影響下、納税の猶予等の納税緩和措置を適用したことなどから、国税の滞納残高が3年連続で増加したことが明らかになった。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。

原告訴訟に関しては、2022年度は前年度を22件上回る137件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「供託金取立等」3件、「差押債権取立」9件、「その他(債権届出など)」123件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が2件。また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処。2022年度は、7件(12人(社))を告発している。

悪質な滞納事例をみると、滞納処分の執行を免れるため、知人に事業を引き継いだように装い、取引先に対し、知人宛の小切手を振り出させるなどして財産を隠蔽した行為について、国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)により告発した事例がある。滞納法人の代表者は、知人Aが滞納法人の事業を個人事業として引き継いだように装い、取引先に対してA名義で工事代金を請求し、Aに対する売掛金の支払いとして小切手を振り出させるなどした。

代表者は、取引先に振り出させた小切手を銀行に持ち込んで現金化し、代表者の居所にある金庫で保管していた。国税当局の徴収職員は、これらの行為が滞納法人に対する滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納法人及び代表者を国税徴収法違反(滞納処分免脱税)により告発している。この「滞納処分免脱罪」の告発は、2021年度は4件(7人(社))だったが、2022年度は大幅に増えている。

そのほか、海外への財産の移転などによる国際的な滞納事案に対しては、租税条約に基づく徴収共助の要請を確実に行うなど、積極的に取り組んでいる。2022事務年度において、日本から徴収共助を要請した件数は15件、また、徴収共助の要請により徴収した金額は約9700万円だった。「徴収共助」とは、租税債権の徴収において執行管轄権という制約がある中で、各国の税務当局が、相互主義の下、互いに条約相手国の租税債権を徴収する枠組み。

なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。