日商、事業承継税制の見直しなど税制改正の意見発表

日本商工会議所は9月20日、「2024年度税制改正に関する意見」を発表した。意見書では、わが国が停滞から成長への転換局面を迎えるなかで、経済の好循環を生み出す存在である中小企業が自己変革力を発揮し、円滑な経営承継をはじめ、デジタル化・DXによる生産性向上や設備投資等に取り組み、持続的な成長を目指していく必要があり、そのためには「中小企業等の自己変革への挑戦」を税制面から強力に後押しすべきだとしている。

主な内容をみると、円滑な経営承継・事業継続に資する税制として、(1)事業承継税制の延長・恒久化(特例措置における特例承継計画の提出期限の延長(2027年12月末まで))、(2)事業承継税制一般措置の拡充(対象株式の拡大(最大3分の2まで→全株式))、(3)納税猶予割合の拡大(相続の場合80%→100%)、(4)後継者の人数の拡大(1名→最大3名)、(5)雇用確保要件の弾力化等を盛り込んでいる。

特例承継計画の提出期限の延長は、円滑な経営承継は中小企業の永続的な課題であることや、2020 年初頭から3年以上もの長きにわたってコロナ禍が続き、その間、中小企業の経営承継がままならなかったこと等を踏まえ、特例措置を活用するために必要な特例承継計画の提出期限については、特例措置の期限である2027年12月末まで、3年9ヵ月延長すべきであるとの考えを示した。

また、事業承継税制における事務負担や猶予取消しリスクの解消に向けた見直しとして、5年経過後の報告不要化、書類の一本化・書類の提出先のワンストップ化や、提出書類の報告漏れや記載内容の不備等に対する宥恕規定の明確化、都道府県による年次報告の事前通知と、事前通知を行う旨の公表の徹底などを要望。さらに、事業承継税制における外国子会社株式の対象化や取引相場のない株式の評価方法の抜本的見直しを求めた。

書類の一本化・書類の提出先のワンストップ化については、事業継続期間の間、都道府県への年次報告書と税務署への継続届出書をそれぞれ作成・提出しなければならず、利用者にとって大きな事務負担となっていることや、報告忘れによる猶予取消しのリスクがあること等により、税理士や経営者が税制の活用に後ろ向きになっていることから、提出書類の一本化や提出先のワンストップ化を行うべきであるとしたもの。

そのほか、中小企業等の自己変革への挑戦を後押しする税制として、(1)中小企業向け賃上げ促進税制の延長・拡充(繰越控除措置の創設等)、(2)業務効率化や成長投資を促す少額減価償却資産特例の拡充・本則化、(3)法人の飲食需要の喚起と中小飲食店の付加価値拡大を促す交際費課税特例の延長・拡充(交際費の範囲から除かれる飲食費の上限額を、現行の1人あたり5千円以下から2万円以下に引上げ)などを意見書に盛り込んでいる。

「2024年度税制改正に関する意見」は↓
https://www.jcci.or.jp/f86f9041d69b94b2d7899d5c26b52c34_2.pdf