2017-06-26
国税庁は23日、ICT・AIを活用した約10年後の「税務行政の将来像」を公表した。これは、情報システムの高度化、外部機関の協力を前提として、現時点で考えられる税務行政の将来のイメージを示したもの。その実現に向けては、e-Taxの使い勝手の改善等を通じた申告・納付のデジタル化の推進により、納税者の利便性の向上とともにデータ基盤の充実を図り、AI技術等を取り入れながら、段階的に取り組んでいくとしている。
この背景には、(1)ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の進展、(2)マイナンバー制度の導入、マイナポータルの本格運用、(3)個人投資家の海外投資や企業の海外取引増加など経済社会のグローバル化、(4)厳しい財政需要による国税職員が減少傾向の一方で所得税申告件数や法人数等の増加、(5)国際的な租税回避への対応や富裕層に対する適正課税の確保、大口・悪質事案への対応のため、マンパワーの重点的投入の必要性などがある。
所得税の各年分の確定申告件数は、1989年の1697万人から2015年には2151万人へ、また、事務年度末時点での法人数は1989年の235万法人から2015年は305万法人へとともに約1.3倍に増えている。一方で、国税庁の定員数は、ピークだった1997年の5万7202人から2016年は5万5666人へと約2.7%減少している。こうしたなか、ICT・AIの活用による納税者の利便性の向上と税務行政のスマート化を図ることが将来像にある。
納税者の利便性の向上では、(1)マイナポータルを通じて、納税者個々のニーズに合った「カスタマイズ型の税情報の配信」、(2)メールやチャットなどによる相談・回答、AIを活用した相談内容の分析と最適な回答を自動表示する「税務相談の自動化」、(3)確定申告や年末調整に係る情報のマイナポータルへの表示による手続きの電子化、国と地方への電子的提出のワンストップ化、電子納税等の推進など「申告・納付のデジタル化」を目指す。
また、課税・徴収の効率化・高度化では、(1)「申告内容と財産所有情報との自動チェック」による申告漏れ等の迅速な把握、(2)是正が必要な誤り事項等を納税者に自動連絡するなど、納税者等に電子メール等により接触を図る「軽微な誤りのオフサイト処理」、(3)AIを活用したシステムによる、精緻な調査必要度判定や納税者への最適な接触方法と要調査項目、優先着手滞納事案の選定等の提示など「調査・徴収でのAI活用」を進める。
約10年後の「税務行政の理想像」は、要約すれば、納税者の利便性の向上においては、申告から納付までの税務手続きを抜本的にデジタル化し、税務署に出向かずに、スムーズかつスピーディに手続きが完了する環境を構築し、また、課税・徴収の効率化・高度化においては、インテリジェント化による事務運営の最適化と重点課題への的確な取組みを図ることにより、スマート税務行政を目指すことにある。
この件については↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/syouraizou/index.htm