2017-06-28
先日、国税庁が2016年度の査察事績を公表し、同年度は検察庁への告発件数が前年度より17件も多い132件だったことが明らかになった。査察は、昨今の経済取引広域化、国際及びICTにより脱税手段・方法が 複雑・巧 妙化している中で、経済社会情勢の 変化に的確対応し悪質な脱税者告発に努めている。それは、消費税事案や国際事案のほか、太陽光発電関連事案など急速に市場が拡大する分野などへの積極的な取組みだ。
消費税事案については、国民の関心が極めて高いこと、また、受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであることから、積極的に取り組まれた。2016年度の消費税事案の告発件数は23 件(前年度12件)、うち受還付事案は11 件だった。また、2011年度に創設された消費税受還付未遂犯を適用(還付金の受領がない限り消費税の不正還付罪の対象とならなかったが、不正還付の未遂も罰則対象に)した事案も2件あった。
告発事例には、消費税の輸出免税制度を利用して不正に還付を受けていたものがある。A社・B社・C社は、高級腕時計の輸出販売を行う会社だが、3社のグループの基幹会社D社の在庫商品である高級腕時計を利用し、高級腕時計を国内仕入と仮装して架空の課税仕入を計上するとともに、当該高級腕時計をD社の国外の関係会社に持ち込み架空の輸出免税売上に仮装して申告を行うことにより、不正に消費税の還付を受けていた。
また、国際事案については、国際課税への取組みが重要な課題と位置付けられており、査察においても、国外取引を利用した悪質・巧妙な不正を行っている国際事案にも積極的に取り組まれた。2016年度の国際事案の告発件数は21 件(前年度28件)だった。告発事例では、国外取引を利用した不正を行い、得た資金を国外留保していたE社の事例が明らかになっている。
E社は、外資系生命保険会社の保険代理を行う会社だが、実質経営者が国外に設立した会社に対して架空の支払手数料を計上する方法により所得を秘匿して多額の法人税を免れ、不正資金を国外に開設した実質経営者名義の預金で留保するほか、実質経営者の国外のコンドミニアムの取得費用に充てていた。この事例では、国外預金の解明のために、租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換制度が活用されている。
そのほか、近年の経済社会情勢に即した事案として太陽光発電関連事案がある。太陽光発電事業の市場は、再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入で急速に拡大しており、それに伴う取引に係る脱税も増加しており、2016年度の同関連事案の告発件数は10件(前年度2件)だった。また、東日本大震災からの復興に向けた経済活動に伴う取引に係る脱税も増加しており、2016年度の震災復興関連事案の告発件数は12件(同3件)だった。