富裕層調査、申告漏れ所得総額は過去最高の980億円

このほど国税庁が公表した2022事務年度の所得税等の調査状況では、新型コロナウイルス感染症の影響による制限が緩和されて調査件数が大幅に増加した上、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を優先して調査した結果、追徴税額の総額は、過去最高額の1368億円にのぼった。そうしたなか、国税当局では同事務年度も“富裕層”への調査を積極的に行っており、申告漏れ所得金額が最高額を更新したことが明らかになった。

国税当局では、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な者などいわゆる“富裕層”に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に調査を実施している。今年6月までの1年間(2022事務年度)には、前事務年度比32.3%増の2943件の富裕層に対する実地調査が行われ、同16.8%増の申告漏れ所得金額980億円が把握された。申告漏れ所得の総額は富裕層対象の統計を始めた2009年度以降で最高額となった。

実地調査の結果、調査件数の約86%に当たる2533件(前年対比29.0%増)から何らかの非違を見つけ、その申告漏れ所得金額980億円について、183億円(同▲23.1%減)を追徴した。1件当たりの申告漏れ所得金額は3331万円(同▲11.6%減)となり、追徴税額は623万円(同▲41.6%減)と前年度からは大幅に減少したものの、所得税の実地調査(特別・一般)全体の1件当たり274万円と比べ2.3倍にのぼる。

また、国税当局では富裕層の海外投資等にも目を光らせており、同期間中にも海外投資を行っていた667件(前年対比39.8%増)の調査を展開し、約87%に当たる583件(同34.6%増)から514億円(同37.4%増)の申告漏れ所得金額を把握、71億円(同▲49.6%減)を追徴。1件当たりの申告漏れ所得金額は7706万円(同▲1.7%減)、追徴税額は1068万円(同▲63.8%減)で、実地調査(特別・一般)全体の274万円に比べ3.9倍となっている。