「社保」「税金」滞納で倒産、23年111件と過去最多に

厚生年金保険等の社会保険料や、消費税や固定資産税等の各種税金など「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加している。日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、2022年度末時点で14万811事業所にのぼり、適用事業所全体に占める割合は5.2%を占めた。前年度に比べて滞納事業所数は減少したものの、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いている。

帝国データバンクがこのほど発表した公租公課滞納倒産動向によると、多額にのぼる公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地など資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2020年から2023年の4年間で272件判明した。このうち、2023年1~11月における発生は過去最多の111件となり、全体の約4割を占めた。2022年通年の74件から1.5倍に増加した。

滞納した公租公課の区分では、特に企業業績が赤字であっても毎月支払う義務が生じる、厚生年金保険などの社会保険料の滞納が原因となったケースが目立った。公租公課のうち、特に企業にとって負担の重い社会保険料は最長3年にわたる納付猶予措置が設けられ、企業の資金繰りを支えてきた。ただ、ポストコロナに向けて企業活動が正常化するなかで特例措置も順次縮小、社会保険料などの滞納者に対する差押さえ処分が本格化している。

年金事務所による厚生年金保険料などの差押さえ件数は、2022年度に2万7784事業所と、前年度の4倍に達し、処分が本格化。そのため、コロナ禍で猶予された社会保険料の納付ができず、法的整理直前に差押さえ処分を受けたパチンコホール大手「ガイア」や、業績不振のなかで消費税と社会保険料の支払いに窮した、韓国食材スーパーや免税店運営の「永山」など、猶予期間中に業績を立て直すことができなかった企業の倒産が相次いだ。

2020~23年間に発生した「公租公課滞納」倒産272件を業種別にみると、最多は「サービス業」の68件で、特にソフトウェア開発などの業種で多く発生。トラック運送などの「運輸・通信業」や「建設業」(47件)、「製造業」(42件)なども40件を上回る水準だった。態様別では、ほとんどのケースで破産など「清算型」の倒産で、累計272件のうち263件・96.7%を占め、再生型の倒産では民事再生法など9件にとどまった。