わが国初の「イノベーションボックス税制」の創設

2024年度税制改正において新設されるものの一つに「イノベーションボックス税制」がある。利益の源泉たるイノベーションについても国際競争が進んでおり、わが国においても、研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資の後押しが喫緊の課題との観点から、国内で自ら行う研究開発の成果として生まれた特許やソフトウエアといった知的財産から生じる所得を税優遇するイノベーションボックス税制を創設する。

具体的には、企業が国内で自ら研究開発を行った特許権又はAI分野のソフトウエアに係る著作権について、その知的財産の国内への譲渡所得または国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認める制度を設けることとする。特徴は、その適用期間が、青色申告を提出する法人が2025年4月1日から2032年3月31日の間に開始する各事業年度と、7年間の長期にわたる点にある。

これにより、対象所得については、法人税率約7%相当の税制優遇(法人実効税率ベースで見ると現在の 29.74%から約 20%相当まで引き下がる税制優遇)が行われる。同税制は、所得全体から、知的財産から生じる所得のみを切り出して税制優遇を行うという、わが国で初の税制だ。国際的にみても、イノベーションボックス税制の創設は、G7ではフランス、イギリスに次ぐ3番目であり、海外に遜色ない制度で無形資産投資を後押ししていく。

対象範囲については、制度の執行状況や効果を十分に検証の上、国際ルールとの整合性、官民の事務負担の検証、立証責任の所在等諸外国との違いや体制面を含めた税務当局の執行可能性等の観点から、状況に応じ見直しを検討する。他方、同税制と一部目的が重複する研究開発税制は、試験研究費が減少した場合の控除率の引下げを行うことにより、投資を増加させるインセンティブをさらに強化するためのメリハリ付けを行うとしている。