予約サイトで事前決済した宿泊者へのホテル側の取扱い

インボイス制度に関して「お問い合わせの多いご質問」に4月に追加されたものに、予約サイトで事前決済した宿泊予約者に対する簡易インボイスの交付がある。それは、ホテルを運営している企業からの「予約サイトを通じて受けた予約について、予約サイト経由で決済が行われた場合、フロントでは現金の授受等が行われないことから、領収書の交付を行っていないが、どのように簡易インボイスを交付すればいいのか」という質問だ。

これに対して回答は、インボイスや簡易インボイスは、その名称を問わず、記載事項を満たしたものであれば、必ずしも領収書や請求書である必要はないため、予約サイトや旅行代理店等を通じて受けた予約で、かつ、予約サイト等を経由して決済が行われた場合には、領収書ではなく、宿泊明細書など適宜の様式により、一定の記載事項を満たした書類(簡易インボイス)を交付することが考えられるとしている。

一定の記載事項は、(1)インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、(2)課税資産の譲渡等を行った年月日、(3)課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)、(4)課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額、(5)税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率だ。

なお、予約サイト等が宿泊者の委託を受けてホテルの宿泊予約を行う手配旅行と異なり、パックツアーなど、宿泊サービスを含めた一連の旅行サービスとして予約サイト等が提供する企画旅行の場合、通常、予約サイト等が宿泊客に対して課税資産の譲渡等を行ったものとなるので、その予約サイト等が宿泊客に対して簡易インボイスを交付する必要がある。この場合、ホテルは、予約サイト等に対してインボイスの交付義務が生じることとなる。

また、簡易インボイスの記載事項のうち(4)の「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」は、ホテルが課税売上として認識している金額となるため、予約サイト等との間で手数料等が差し引かれて精算される場合であっても、その手数料等差引前の金額となる、との考えを示している。

そのほか、予約サイト等が宿泊代金に併せて予約手数料を宿泊客から徴収している場合や、値引き販売を行っている場合には、簡易インボイスに記載される金額(宿泊代金)が、宿泊客が実際に予約サイト等を通じて支払った代金の総額と異なることも考えられるが、消費税法上問題はないことも明らかにしている。

なお、社員の出張等に伴う宿泊費で、社員に支給するもののうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる(出張旅費等特例)ので、その場合には、ホテルを利用する側の事業者側において必ずしもホテルから簡易インボイスを受領する必要はないとしている。