金融庁、監査法人のローテンション制度で調査報告

金融庁は20日、2016年3月に公表された「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言を受け、「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」を公表した。同提言では、監査法人の強制ローテーション制度(企業が監査契約を締結する監査法人を一定期間ごとに交代させることを義務付ける制度)の導入について、諸外国の最近の動向等も踏まえて、金融庁において、深度ある調査・分析をすべきとされていた。

監査法人のローテーション制度は、2006年の金融審議会公認会計士制度部会で検討されたが、(1)監査法人の交代により監査人の知識・経験の中断が生じうる、(2)大手監査法人の数が限られ、現実的に交代が困難になるおそれがある等の観点から、その導入は見送られ、監査法人は交代させないが、企業の監査を担当するパートナーを監査法人内で一定期間ごとに交代させることを義務付ける「パートナーローテーション制度」の強化がなされた。

今回の調査報告によると、「パートナーローテーション制度」の有効性が検証されたが、 過去の不正会計事案において、同制度は期待された抑止効果を発揮できておらず、また、企業による自主的な監査法人の交代は進んでいないと指摘。東芝事案では同一監査法人が47年継続しており、TOPIX上位100社のうち、この10年間に監査法人が交代したのは5社と、企業と監査法人の監査契約は固定化している。

一方、欧州における監査法人のローテーション制度導入をみてみると、EUでは、上場企業等に対し、その会計監査を担当する監査法人を一定期間ごとにローテーションさせる義務を課す規則を2016年6月より実施。規則の概要は、同一の監査法人による監査期間は、原則として、最長10年(その監査法人が再び監査を行うためには、交代後、4年間以上のインターバルが必要)とされている。

その導入の効果については、なお見極めに時間を要するが、欧州当局からのヒアリングによると、監査法人のローテーション制度導入による混乱はこれまでのところ見られていないという。調査報告は、「監査法人のローテーション制度については、国内の監査法人、企業、機関投資家等の関係者からのヒアリング等を実施し、さらなる調査・検討を進めていくことが適当」としている。

同調査報告は↓
http://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20170712_auditfirmrotation/02.pdf