2024-05-29
通常、個人が所有する非上場株式をその発行会社に譲渡(金融商品取引所の開設する市場における取引等を除く)して、発行会社から対価として金銭その他の資産の交付を受けた場合、その交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額がその発行会社の資本金等の額のうち、その交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当所得とみなされて所得税が課税される。
しかし、相続や遺贈により財産を取得し、その相続・遺贈について納付すべき相続税額がある個人が、その相続の開始があった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに、その相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合において、その譲渡対価の額がその譲渡した非上場株式に係る資本金等の額を超えるときは、特例制度がある。
それは、その超える部分の金額については、みなし配当課税を行わずに全額を非上場株式の譲渡所得の収入金額とするものだ。この特例を適用すると、その譲渡対価の全額が非上場株式の譲渡所得の収入金額となり、その収入金額から取得費や譲渡に要した費用を控除して計算した譲渡所得金額の15%相当金額の所得税が課税される。また、取得費を計算する際には、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の適用を併用することもできる。
この相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例を適用するためには、非上場株式をその発行会社に譲渡する日までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社に提出する必要がある。発行会社は、譲り受けた日の属する年の翌年1月31日までに本店または主たる事務所の所轄税務署長にこの届出書を提出する必要がある。
なお、上記の「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは、相続や遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものだ。ただし、この特例は譲渡所得のみに適用がある特例なので、株式等の譲渡による事業所得及び雑所得については、適用できないこととされている。