居住者が海外で株式等を売却した場合の課税関係は

日本の居住者は、原則として国内で生じた所得及び国外で生じた所得のいずれについても、日本で課税されることとなる。したがって、日本の居住者が海外において株式等を売却したことにより得た譲渡益全般について、国内で株式等を売却した場合と同様に、課税されることとなる。「居住者」とは、日本国内に住所があるか、または現在まで引き続いて1年以上居所がある個人をいう。

居住者が、その年において外国の法令により所得税に相当する租税(「外国所得税」)を納付する場合には、外国所得税の額のうち一定額をその年分の所得税額から差し引くことができる。これを外国税額控除という。この控除を受けるためには、株式等を売却した年分の確定申告書等に一定の書類を添付する必要がある。また、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引けるのは、下記の算式で計算した控除限度額が限度となる。

所得税の控除限度額は、「その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)」の算式で計算する。また、その外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合には、「復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)」の算式で計算した金額を限度として、その超える金額をその年分の復興特別所得税額から差し引くことができる。

上記の「その年分の調整国外所得金額」とは、純損失または雑損失の繰越控除や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除などの各種繰越控除の適用を受けている場合には、その適用前のその年分の国外所得金額(非永住者は、国外所得金額のうち国内で支払われ、または国外から送金された国外源泉所得に係る部分に限る)をいう。ただし、国外所得金額がその年分の所得総額相当金額を超える場合は、その年分の所得総額に相当する金額となる。

なお、日本の居住者が、海外で株式等を売却したことにより得た譲渡益に対しては、租税条約により外国所得税が課税されない(日本においてのみ所得税が課税される)場合がある。また、2015年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設され、2015年7月1日以後に国外転出をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されることとなっている。