6月からの定額減税、企業の約7割で『事務負担増』

2024年分の所得税及び個人住民税について、定額による特別控除「定額減税」が始まった。所得税に関しては、6月の給与や夏季賞与から反映される。実質賃金のマイナスが過去最高の25ヵ月連続となるなか、個人消費の押上げ効果が期待されている。しかし、その一方で、政府は所得税の減税額を給与明細に明記することを企業に義務づけるなど、一定の事務作業の増加が生じることが見込まれている。

帝国データバンクが発表した「定額減税に関する企業の影響アンケート調査」結果(有効回答数998社)によると、自社における定額減税による事務負担の有無は、「負担感がある」とした企業(66.8%)は約7割にのぼった。他方、「負担感はない」企業は9.7%とおよそ1割にとどまり、「どちらとも言えない/分からない」は23.4%だった。企業からは事務手続きを理解する時間や作業の増加による負担を訴える声は多い。

加えて、年末調整や一括給付による対応で負担軽減を求める声も多数あがった。また、「負担感がある」企業を規模別にみると、「大企業」は68.3%、「中小企業」は66.6%、「小規模企業」は62.6%とそれぞれ6割台となった。企業規模の差は大きくないが、家族経営の企業や給与処理などを外部に委託しやすい比較的小さな企業ほど定額減税に対する負担感は少なく捉えているようだ。

企業にとっては、通常業務にプラスして新たな事務作業が増えたことに加えて、給与などの支給後に従業員から問い合わせを受けるなどの事後処理も想定される。時間が余計にかかることをコスト増と捉える企業も少なくない。政府は、定額減税の特設サイトや給与支払者向けのコールセンターを設置するなど、周知・啓蒙を進めているが、どこまで企業の負担軽減につながっているかは不透明だ。

とはいえ、定額減税の効果が、この夏以降に消費の拡大として表れれば、企業の負担感も和らぐかもしれない。企業からは、「定額減税で事務社員の負担が増えた。給与ソフトが対応と言っても、最終的には人の目でチェックしなければならない」(金融、中小企業)、「定額減税は、会計ソフトの改修費用が発生かつ業務負担が増加している。一方で、社員側はうれしいと思う」(飲食料品・飼料製造、中小企業)などのコメントが寄せられた。