2023年度査察、151件摘発し脱税総額は約120億円

いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が公表した2023年度査察白書によると、同年度に査察で摘発した脱税事件は前年度より12件多い151件で、2年連続で増加し、その脱税総額は前年度を6.6%下回る約120億円だった。今年3月までの1年間(2023年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は154件と、前年度(145件)を9件上回った。

継続事案を含む151件(前年度139件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち66.9%に当たる101件(同103件)を検察庁に告発。この告発率66.9%は前年度を7.2ポイント下回った。2023年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税不正受還付事案を16件(不正受還付額約4.5億円)、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案を16件、国際事案を23件、それぞれ告発している。

近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2023年度の脱税総額119億8000万円は、ピークの1988年度(約714億円)の約17%にまで減少している。1件当たり平均の脱税額は前年度比14.1%減の7900万円で、ここ5年は1億円を下回っている。また、告発分の脱税総額は同10.9%減の89億3100万円だった。告発分1件当たり平均の脱税額は同9.3%減の8800万円となっている。

告発分を税目別にみると、「法人税」が前年度から12件増の59件で全体の約58%を、脱税総額でも約57.3億円で約64%をそれぞれ占めた。「所得税」は同5件減の14件(脱税総額約12.1億円)、「消費税」は同7件減の27件(同約18.3億円)、「源泉所得税」は同1件減の0件、「相続税」は同1件減の1件(同約1.5億円)。消費税の告発件数のうち16件は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものだった。

告発件数の多かった業種は、「不動産業」が18件でトップ、次いで「不動産業」が16件、「人材派遣業」が6件で続いた。なお、2023年度の査察では、消費税事案のほか、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって、広く納税者に利用させていた脱税請負人事案などを告発し、時流に即した社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対しても積極的に取り組んでいる。

同査察白書の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sasatsu/r05_sasatsu.pdf