免税事業者に新規発注を「原則しない」企業が2割

東京商工リサーチが課税事業者を対象に実施した「インボイス制度に関する調査」結果(有効回答数4799社)によると、2023年10月にインボイス制度が始まったが、8ヵ月が経過した今年6月の調査では、免税事業への新規発注は「原則発注しない」と回答した企業が2割(20.9%)あることが分かった。一方、導入前から取引のある免税事業者とは、発注価格や発注量は「変化なし」が9割超で、従来の取引には大きな変化がなかった。

インボイス制度の開始前は、免税事業者との取引で取引価格の引下げや発注量の減少などが懸念されていた。今回の調査では、「単価を引き下げた」は2.6%、「発注を止めた」は1.6%にとどまった。免税事業者との新規発注について、「特に条件を定めずに発注している」は56.4%。一方、「同等の条件で取引ができる課税事業者が見当たらない場合のみ発注している」が22.5%、「原則発注しない」が20.9%だった。

規模別でみると、「特に条件を定めず発注」は大企業が61.4%、中小企業は55.8%と、中小企業が5.6ポイント低かった。「同条件の課税事業者が見当たらない場合のみ発注」は大企業22.3%、中小企業22.6%と大きな差はなかった。「原則発注しない」は大企業が16.1%に対し、中小企業は21.5%と5.4ポイント高く、中小企業は免税事業者との取引に消極的な姿勢が目立った。

免税事業者への新規発注の対応について産業別にみると、「特に条件を定めず発注」が最も高かったのは「農・林・漁・鉱業」の66.6%。次いで、「サービス業他」61.2%、「製造業」57.9%、「不動産業」57.0%が続き、最低は「建設業」の52.7%。一方、「原則発注しない」は、最高が「金融・保険業」の31.4%。次いで、「卸売業」25.0%、「運輸業」22.4%、「情報通信業」22.0%と続き、最低は、「農・林・漁・鉱業」の5.5%だった。

業種別では、「条件を定めず発注」は、「窯業・土石製品製造業」の76.9%が最も高く、「映像・音声・文字情報制作業」の76.1%が続いた。一方、「原則発注しない」は、「保険業」の43.7%が最も高く、次いで、「洗濯・理容・美容・浴場業」の42.8%、「機械等修理業」の40.0%が続いた。「自動車整備業」や「各種商品小売業」、「飲食店」など個人客向けの取引が多い業種が上位に入り、免税事業者との取引に消極的だった。

免税事業者との取引交渉が、独占禁止法に抵触する可能性や下請法違反のおそれもあり、取引を躊躇させている側面もうかがえるが、免税事業者を取り巻く環境は厳しい状況が続く。免税事業者からの課税仕入れは、制度開始後3年間は仕入税額の8割、その後の3年間は5割の控除ができる。だが、制度開始後は、原則発注しなかったり、発注を辞めたとの回答も一部にあり、制度の周知や免税事業者へのきめ細やかな支援が必要となっている。

同調査結果は↓
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198683_1527.html