業界団体、暗号資産の課税方法の申告分離課税を要望

暗号資産(仮装通貨)の業界団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と共同で「2025年度税制改正に関する要望書」を取りまとめ発表した。仮装通貨の取引で生じた所得は、現在は総合課税の対象となり、最大55%の税率が課されるが、要望書では、暗号資産の所得区分を見直した上で、利益への課税方法は、20%の申告分離課税とすることを求めた。

要望書によると、JCBAが2022年6月、暗号資産投資を行う個人投資家を対象に「暗号資産税制に関するアンケート調査」を実施した結果、回答者の70%は2021年度の確定申告を行っていなかったが、その大半の理由が暗号資産取引の所得が20万円以下であること、または利益がそもそも未確定であることだった。これら回答者の8割以上は、分離課税が導入された場合には暗号資産への投資額を増やす意向を持っていた。

さらに、暗号資産取引の目的(複数回答)については、87%が「1年以上の長期保有」、32%が「NFT購入」と回答、従来の短期保有目的のみならず、中長期保有資産としての役割や、NFT利用拡大との連動を如実に示す結果となった。なお、暗号資産にかかる所得に対する日本の税率が高いことに起因して海外移住を検討しているとした回答者も約半数にのぼり、個人投資家の暗号資産税制に対する強い懸案が浮き彫りとなったという。

要望書では、利用者による適正な税務申告によって捕捉性を高めることが税の徴収において重要であるなか、暗号資産による利益が分離課税対象ではなく、一律の税率でないこと、また申告の有無に拘わらず前年度の損失繰越ができない現行税制は、利用者による適正かつ積極的な申告の促進を妨げ、加えて、保有する暗号資産を他の暗号資産と交換した場合にも課税対象としていることも、税務申告の促進を妨げているとの意見を示した。

その上で、暗号資産の実態を踏まえた税制を構築する観点から、暗号資産の譲渡による所得の所得区分について、販売目的(短期間における継続的売買による利益獲得目的)以外で暗号資産が保有されている場合があること、支払手段以外の性格を有する暗号資産があることなどを踏まえた上で、雑所得や事業所得以外の所得区分がありうることを明らかにするような法令等の整備が行われることを要望した。

さらに、暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望。暗号資産デリバティブ取引についても同様とすることを求めた。そのほか、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3ヵ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすることなどを要望書に盛り込んでいる。

「2025年度税制改正に関する要望書」は↓
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/07/20240730-001.pdf