2023年度の滞納整理の訴訟提起は139件~国税庁

国税庁が先日公表した2023年度租税滞納状況によると、新規滞納発生額全体の5割超を占める消費税の新規滞納発生が大きく増加したことなどから、国税の滞納残高が4年連続で増加したことが明らかになった。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。

原告訴訟に関しては、2023年度は前年度を2件上回る139件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「供託金取立等」1件、「差押債権取立」7件、「その他(債権届出など)」129件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が2件。また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処。2023年度は、8件(16人(社))を告発している。

悪質な滞納事例をみると、滞納処分の執行を免れるため、取引先に対し、工事代金等を代表者の息子等名義の預金口座に振込入金させて財産を隠蔽した行為について、滞納処分免脱罪により告発した事例がある。滞納法人の取締役(代表者の妻)は、徴収職員に対し、滞納法人は廃業したと虚偽の説明を行った。代表者と取締役は、共謀し、滞納法人の取引先に依頼して、滞納法人の工事代金等を両者の息子等の名義の預金口座に振り込ませた。

国税当局(徴収職員)は、工事代金等を両者の息子等の名義の預金口座に振り込ませた行為が滞納法人に対する滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠蔽に該当すると判断し、滞納法人、代表者及び取締役を国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)で告発した。この「滞納処分免脱罪」の告発は、2022年度は前年度の4件(7人(社))から7件(12人(社))へと大きく増加したが、2023年度は8件(16人(社))とさらに増えている。

そのほか、海外への財産の移転などによる国際的な滞納事案に対しては、租税条約に基づく徴収共助の要請を確実に行うなど、積極的に取り組んでいる。2023事務年度に、日本から徴収共助を要請した件数は11件、また、外国の税務当局から徴収共助の要請を受けた件数は3件だった。「徴収共助」とは、租税債権の徴収において執行管轄権という制約がある中で、各国の税務当局が、相互主義の下、互いに条約相手国の租税債権を徴収する枠組み。

なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。