2024-11-06
IT導入補助金は、中小企業のデジタル化推進を支援するために設けられた制度であり、商品の取引や在庫管理のシステムなど、生産性向上に資するITツールを導入する中小企業・小規模事業者等の事業主体に対して、これに要する経費の一部を補助する「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金(IT導入補助金)」を交付するものである。
会計検査院は、この交付状況を検査し、その内容を公表した。
令和2年度から令和4年度までに交付された補助金の0.8%にあたる376の事業主体が実施した445事業に対して実地検査を行ったところ、その9%にあたる30事業主体の41事業において不正が行われていたことが発覚した。不正行為の総額は1億812万円にのぼっている。
不正は、事業主体がIT導入支援事業者やその関係会社等から、協賛金や紹介料などの名目で資金の還流(キックバック)を受け、実質的に自己負担額を減額若しくは無償とするものだった。中には、自己負担額を上回る不当な利益を得るなどの不正が行われていたものや、ITツールを導入していないのに導入したとする虚偽の実績報告等が行われていたものもあった。これらは、補助金の交付規程等に大きく反するものであり、断じて許されるものではない。
不正が起きた背景として、IT導入支援事業者やその関係会社等からの働きかけがあったとされている。不正に関与したメーカー、ベンダーなどのIT導入支援事業者15者が関わっていた事業は1,978事業、交付額は58億2,891万円にものぼる。発覚した不正は氷山の一角ではないかと見られている。
当該補助事業は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が生産性革命事業の一環として、運営費交付金等により支援事業を実施しているものであり、事務局業務を行っているのは一般社団法人サービスデザイン推進協議会である。
会計検査院は、中小企業基盤整備機構及びサービスデザイン協議会に対し、実質的還元等による不正を行っていた30事業主体から過大に交付された補助金を速やかに返還させる手続を行わせることを要求している。
また、会計検査院は、不正に関与したIT導入支援事業者15者が支援した事業主体や同種の不正な事態の有無についても調査を要求し、適正な運用体制の整備等が必要であるとした。