令和5事務年度の法人税等の申告(課税)事績の概要

令和6年10月30日、「令和5事務年度の法人税等の申告(課税)事績の概要」が国税庁ホームページで公表された。
 
令和5年度における申告所得金額の総額は過去最高であり、法人税の申告件数、申告所得金額、申告税額のすべてが前年を上回った。具体的には、申告件数が318万件、申告所得金額の総額が98兆2,781億円、申告税額の総額が17兆3,924億円に達しており、いずれも4年連続の増加である。これにより、申告所得金額は前年に比べ13兆2,675億円(15.6%)増加、申告税額も2兆4,825億円(16.7%)の増加となっている。
 
この増加傾向の背景には、コロナ禍からの経済回復と企業業績の改善、円安による輸出企業の収益増加、デジタル化とDX推進による生産性向上、政府の投資促進施策と法人税制の影響が考えられる。
 
加えて、令和4年4月1日に導入されたグループ通算制度の影響にも注目したい。令和6年6月30日時点での通算法人数は18,937件、内訳として親法人が2,049件、子法人が16,888件であったが、グループ通算制度における黒字申告割合は55.0%で、黒字申告の所得金額は29兆7,815億円に上り、黒字申告1件当たりの平均所得金額は2,859百万円にもなっている。この制度はグループ全体での税負担を見直すために設けられたものであるが、申告所得金額を押し上げる要因の1つとなっている。
 
源泉所得税等についても動向が公表されており、令和5年7月1日から令和6年6月30日までに提出された徴収高計算書によると、源泉所得税等の税額は21兆3,351億円であった。しかし、前事業年度に比べると2.2%減少しており、減少額は4,807億円に上る。内訳を詳しく見ると、給与所得税額は13兆円余りで前年対比103.8%増加している一方、配当所得税額は前年対比74.1%、減少額は1兆5,764億円にも上る。一方で、特定口座内保管上場株式等の譲渡所得等の税額は前年対比170.7%と大幅に増加、増加税額は3,423億円となった。同様に利子所得等の税額も前年対比131.2%、増加税額は1,047億円と増加した。国内外の市場動向や株式市場の活性化が影響していると推測される。
 
令和5年度の法人税申告におけるe-Tax利用率は86.2%と税務手続のデジタル化も着実に進展している。主要な申告書のほか、財務諸表など添付されるべき書類とされている書類を含めALL e-Tax率は63.8%となった。これは、4社に3社がALL e-Taxということになる。
 
 
(参考) 国税庁「令和5事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」