2024-11-20
衆議院選挙で議席を伸ばした国民民主党が提案する「年収103万円の壁」を178万円に引き上げる案が注目を集めている。深刻化する人手不足への対応策として、年収の壁の引き上げはパートタイマーなどの働き方が変わり、働き控えの解消につながると期待されている。また、減税効果による実質賃金の増加も見込まれる。
こうした背景のもと、帝国データバンクは、「103万円の壁」の引き上げについて企業にアンケートを実施し、その結果を令和6年11月14日に公表した。詳細は以下のリンクで確認できる。
アンケート調査は、2024年11月8日~11月12日にかけてインターネットで実施され、有効回答企業数は1,691社であった。
日本の社会全体にとって「103万円の壁」引き上げをどう考えるかを尋ねたところ、「賛成」と「撤廃すべき」を合わせた約9割の企業が見直しの必要性を訴える結果となった。
回答企業からは、「103万円の壁を意識するパートの方の働き控えが解消される」、「社会保険料の壁もあるので、所得税のみの見直しでは働き控えはそれほど変わらない」といった意見が寄せられた。「103万円の壁の制度自体が古いため、社会保険制度とともに制度設計の見直しが必要」との声もあった。
令和2年からは、税制改正により所得税の基礎控除や給与所得控除などが変更されている。また、平成29年以降、配偶者控除や配偶者特別控除が配偶者の所得金額に基づくものから、所得者本人の所得金額も影響する仕組みになっている。
さらに政府は、令和6年度税制改正大綱において、児童手当の所得制限が撤廃や支給期間延長に伴う扶養控除見直しを示唆している。
扶養控除の見直しにより課税総所得金額や税額などが変わることで、社会保険制度や教育費等の給付・負担額に不利益が生じないよう措置を講じる必要があるとしている。
例年、税制改正大綱は12月中旬に公表される。今後、「103万円の壁」に関する議論の進展が期待される。
(参考)「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケート
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241114-1-03mwall/
(参考)令和6年度税制改正の大綱
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/20231222taikou.pdf